銀の刃が光る時(長編)

□第一訓
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ここは江戸の中心の町、かぶき町。新八はいつもの様に階段を上がり、引き戸を開ける。

「おはようございまーす‥って起きてる訳ないよな…。」

ため息混じりに呟いて、戸を閉めた。ここ、『万事屋銀ちゃん』は、かぶき町四天王の一人、お登勢が経営している『スナックお登勢』の2階にある。新八は押し入れを開き、中で寝ている少女に声をかけた。

「神楽ちゃん、もう朝だよ!」

「うーん…もう食べられないアルー…」

「まったく、夢の中でも何か食べてるよ。ちょっと神楽ちゃん!いい加減起きないと」

「まだ食えって言うアルか‥仕方ないアルな…」

ガブッ!

「ギャアアアア!!」

神楽は新八の腕を何だと思っているのか、思いきり噛み付いてきた。そして、新八の断末魔にも似た悲鳴に、やっと目を覚ました。

「何アルか新八ィ‥。少しは静かにしてられねーのかヨ。」

「テメェのせいだろーがァァァ!!!」

噛まれた腕から血を流しながら、新八はシャウトした。【改ページ】新八のシャウトに、ようやく目を覚ましたらしい一応この万事屋の主人である銀時が、のそのそと隣の部屋から出てきた。

「んだよ、うるせーなー‥。新八っつぁんよォ、少しは静かなツッコミとか出来ねーの?」

「あ、銀さんおはようございます‥って、何で朝からうるさいうるさい言われなきゃいけないんですか!?元はといえばアンタらがさっさと起きないからいけないんでしょーが!!」

「はいはい。ったく、朝から怒鳴りやがって‥どこのお母さんですかコノヤロー」

気だるげに舌打ちして、銀時は奥に引っ込んだ。銀時の態度にただでさえムカついていた新八に追い打ちをかけるように神楽が言った。

「オイ、ダメガネ、早く朝メシの用意しろヨ。あと定春のエサ。」

そう言い捨てて、ふいっとトイレに行ってしまう。

「ふざけんなァァァ!!!」

新八は肩をわなわなと震わせて、悲痛な叫びを上げた。が、しかし、その声は途中で定春に頭を喰われたせいでかき消された。
万事屋のいつも通りの日常、いつも通りの平穏な空気だった。誰もがいつも通りに一日が過ぎていくと思っていた。
この時までは……
 

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