記念部屋でござい

□二周年企画・好きっていいなよ〜主の奮闘〜
4ページ/6ページ

一太郎は何も言わず、その場を離れた。
ドアを開けて廊下に戻ったところで、戻るのが遅い一太郎を探していた側近に見付かった。
一太郎はてっきり、怒られるものと思っていた。
しかし側近は、そうはしなかった。
彼に見付かった時、一太郎は泣いていたのだ。
坊っちゃん、おつらいのですね。大丈夫ですよ。悲しいときは思いきり泣けば良いのです。
側近は優しく言って、一太郎の肩を抱く。
そう言われて、一太郎は泣いた。


それは諦めの涙であった。仁吉は、一太郎の前では泣かない。
辛さも悲しさも、まるで感じていないように振る舞う。
そうして必死に隠して一太郎を気づかい、守ろうとするのだ。
しかしその優しさは、一太郎に、彼では仁吉を支えられないことをはっきりと伝えていた。
ショックだった。
涙は拭っても拭っても止まらなかった。
仁吉は、一太郎を寄り掛からせてはくれるが、一太郎に寄り掛かってはくれないのだ。
彼が安心して背中を預け、思いっきり泣くことができる場所は、一太郎の前ではないのだ。




同じ守役で、竹馬の友で、仁吉と同じくらい一太郎にとって、大切で大好きな存在。
永代佐助。


だから一太郎は、仁吉を諦めた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ