記念部屋でござい
□ーキミだけがいない世界2 ー最低でサイコーな日々
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「おんや。粗忽なお前さんにしては気のきくこと。」
「誰が粗忽だってんだ。茶ぁやらねぇぞ。」
むっとした顔の屏風のぞきの手を避け、金次は手渡された急須の茶を一息で飲み干した。
「くはぁ。生き返る。
それにしてもお前さん、口で嫌いと言うわりには、仁吉のことを信用しているようじゃねぇか。」
「はっ?」
唐突に仁吉の名を出され、屏風のぞきは目が点になる。
「仁吉の作る薬は、苦いがどんな病でも取り除いてくれる、と言ってたじゃねぇか。」
「そ、そうだろ?事実、若だんなは仁吉の薬のお陰で、病から何度も回復してるじゃねぇか。」
「それは、相手が若だんなの場合は、だろ?
あいつの関心事は、いつだって若だんなだ。
あたしら妖のことなんて、考えの外なんじゃねぇのか?
さっき飲ませてくれた薬だって、本当は嫌がらせのために作った、ただ苦いだけの代物かもしれないぜ。」
「阿呆か、てめぇは!仁吉はそんなことしねぇよ!」
屏風のぞきはむきになり、思わず立ち上がった。
「あいつは性悪で高飛車だが、そんなへそ曲がりじゃねぇ!
第一、わざわざ効かない薬を煎じるなんて回りくどいこと、面倒くさがりのあいつがするわけねぇよ!
俺が具合が悪くなった時だって、文句は言ってたけど優しくしてくれたんだ!」
「お前、そんな具合が悪くなったことあったのか?屏風のぞき。」
金次に問われ、屏風のぞきは、そう言えばいつだったっけ、と首をかしげる。
「まぁ、いいや。
にしてもお前、同じ薬を飲んだわりには、随分立ち直るのが早いな。」
「当たり前だろ。
仁吉がちびの頃から、あいつ手製の薬湯を飲んでんだ。流石に慣れるさ。」
「ちび?あの仁吉さんにそんな時があったたぁねぇ。」
「あいつと佐助は、若だんなの守としてここに来たんだ。人間の子として、な。
だから、最初は十くらいのガキの成りしてたんだぜ。
まぁ、中身は今と大して変わってなかったけどな。」