よろpixiv
□君達女の子僕達男の子
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おしろと獏を寛朝の供にと託した後、一太郎は離れでふと、傍らにいた兄やに声をかけた。
「ねぇ、仁吉。」
「はい。」
「あの、妖って、性別を自在に変えられるのかい。」
それは、先日のことだ。
寛朝を一人で小田原に行かせるわけにはいかぬと、一太郎は、寛朝のお供をしてくれるよう離れに出入りしている妖 達に声をかけた。
その時、道中に知り合いがいるというおしろが名乗りを上げてくれた。
しかし、一太郎は初めはそれを諾としなかった。
おしろは、人の姿は婀娜っぽく小粋な姐さんなのである。
寛朝は曲がりなりにも僧侶だ。僧侶が供の者に女性を連れていては、障りがあるだろうと思ったのだ。
そう言うと、おしろは軽く笑って、ではあたしが女でなければようございますねと返した。
そして、あっという間に目元の涼しい青年に姿を変えたのであった。
「なるほど。」
「もっとも、お前は見ていないよね。男になったおしろの姿は。」
ひどく嫌がっていたから、と一太郎は笑う。
おしろは、仁吉に密かに思いを寄せている。だからだろうか、 おしろは、仁吉に男に化けた自分の姿を見られるのを頑なに拒んでいたのだ。
しかし、当の仁吉はおしろのそんな心に全く気づいていなかった。
「まぁ…一時的に変えることは苦ではございません。そもそも、妖にとって性別とはあまり関係のないものでございます。
我らは、本来生殖で増えるものではございませんから。」
仁吉はあっさりと言った。
「そうなの。」
「はい。まぁ、もともとの性は男か女か決まってはおりますが、どちらでもあまり関係ありません。」
ただ、意図的に化けてなるものか、そうでないかの違いであるらしい。
「ふーん。じゃあ」
「仁吉や佐助も、化けようと思えば女の人になれるの。」