物の怪斬り 溝猫長屋 祠之怪


★★★★★
輪渡颯介先生の「溝猫長屋」シリーズの第四段です。シリーズ完結を思わせる内容でしたが、終わらないでほしい(泣)!
今回は、ストーリーの前半から溝猫長屋の子ども達と手習い所の古宮先生の命が危うくなるという、シリアスな展開です(の割には、落語風のコミカルな描写は健在です)。子ども達を守るために命を懸けて闘う、という人道的な古宮先生の姿を見ることができた、貴重な回でした(人をいたぶるのが大好きな性癖はバッチリ出てました)。
今回大活躍だったのが、弥之助親分の舎弟の竜さんでした。「優しき悪霊」の時はちょい役だったのに、「欺きの童霊」では子ども達を助けたり、今回は親分を助けてお侍と斬りあったり、格好良かったです(だからこそ余計、早く二つ名を改名させてあげたいところ)!
古道具屋皆塵堂シリーズに引き続き、人情話に走りすぎることなく、適度にふざけつつ繰り広げられるお江戸ストーリーに、今回も魅せられました。

絵金、闇を塗る


★★★★★
軽い気持ちで読み始めたのですが
「続きが気になるから!」と仕事を放棄しかけてしまう程に(社会人失格ですね)夢中で読んでしまいました。

幕末から明治にかけて活躍した、「絵金」という絵師と、その絵金に「噛みつかれて」しまった人々の物語です。
読み終えたあと、無性に土佐(高知県)に行きたくなります。
絵金を育て、狩野派に送り出した土佐の絵師の方々。
絵金に技を伝授しつつ、その異色の才能に恐れ慄く狩野派の方々。
他にも様々な人が登場するのですが、共通しているのは、絵金が描き出した絵に魅了され、虜になっていくところなのかな、と思いました。
一番印象的だったのは、絵金の絵を尽く破り捨てながらも、彼の絵に囚われていった、狩野派の先生のエピソードでした。
気の毒にな、と思いつつ、そんなにまで魅了されてしまう絵と出会えるなんて、羨ましいな、とも思います(芸術に関しては全くの門外漢なのですが)。
「噛まれる」という土佐の独特の用語にもキュンキュンしてました。犬神信仰に関連するワードということで、またキュンキュン。
絵金展とか東京でもやってくれないかなぁ。燃やされるわ破られるわで、あんまり残ってないから無理かぁ。あー、でも見たいなぁ。




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