(仮)

□第6話
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郊外の町外れにある、
場違いなほどに清潔感の溢れる白い家。


「朝やでー! さっさと起きぃや」


朝早くに、少年の声が響いた。


「ほら、睦月ー!
 はよ起きなあかんでー! 飯やー」


バン、と部屋のドアを開き、電気を点ける。

ベッドで寝ていた赤髪の少年が
頭まで布団に潜った。


「起こしとんのに、2度寝やめぃ!!」


茶髪の少年―――
舞弘が布団をはぎ取る。


「だーぁ!! 寒ィだろ! 返せ!」


ベッドの上で縮こまりながら、
非難の声を上げる睦月と呼ばれた赤髪の少年。


「返してほしいんやったら、自力でとれやー」


ほーれほーれ、とベッドから少し離れたところで挑発する舞弘。


「んー? いらへんの?
 それとも、我からは取れへんのかー?」


さらに挑発を続ける舞弘に、ついに睦月が立ち上がった。


ベッドの横の棚の上に置かれたホルスターから
愛用の自動式拳銃を抜く。

そして。


「返せ!」

「ほわぁい!?」


舞弘の謎の悲鳴と銃声がかぶる。


「“Why”じゃねぇ!」

「ちゃう、ちゃうで!
 今のはビックリしただけや!」

「黙れ」


ぐ、と襟首を掴み上げられる舞弘。


「あー、分かった、分かった……。
 返すから離したってな」


はい、と舞弘から差し出された布団を受け取ると、
睦月はまた布団に潜った。

が、


「もう寝れねぇだろ!」


すぐに起き上がった。


「おはよーさん。如月起こしに行こうや」

「ったく……」


悪態をつきながら、
睦月は舞弘とともに部屋を出た。



「如月ー? 朝やー。入るでー?」


隣の部屋のドアをノックしてから、
ドアを開け、電気を点ける。

果たして、


「…………」

「…………」


床にベッドを向いて座り、
ベッドに乗せた両腕に顔を埋めて眠る青髪の少女が
人工の光に照らされた。


「……どないしよか」

「俺、関わりたくねぇ………」

「でも、今回はちゃんとベッドまで辿りつけたんね。
 この前はドアの前で寝てたで」

「廊下で寝てるときもあった」

「…………」

「…………」


2人は顔を見合わせ、笑う。


「何だかんだでガキだな」

「せやね。もう少し寝かせとくか」

「おう」


そう言ってドアを閉めようとして―――、


「ちゃうわー!!!!」


勢いよく開き直した。


「ほら、如月! はよ起き!
 飯冷めてまうで?」


舞弘が青髪の少女、如月の肩を揺らす。


「さっさと起きろ」


睦月が如月の頭を叩いた。


「………ん、ぅう」


もぞもぞと如月が動き、うっすらと瞳を開いた。



「……………お兄、ちゃん……?」



ぼぅ、とする意識の中で発せられた言葉に、
睦月と舞弘が1度、思考停止した後、
同時に、


「誰が!!」

「寝ボケんな!!」


如月の頭を思い切り叩いた。


「………痛い」


意識の覚醒した如月が上体を起こし、大きく伸びをする。


「おはよーさん。ご飯にしようや」

「腹減ったぞ、如月」


2人が部屋から出ていくと、
まるで嵐が去ったかのように、如月の周りは静かになった。


「…………」


如月は棚の上の2つのホルスターを右足と腰にそれぞれセットすると、
一緒に置かれていた写真立てを倒した。


「如月ー! 早くしろー!」

「冷めてまうよー」


聞こえてきた声に、


「………今行く」


部屋を出ながら、小さく答えた。











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