二次

□排球
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私立辰鳴(しんめい)高校。

京都で随一の広さを誇る私立高校だ。

その高校の制服である
黒い学ランを着た男子生徒が2人。

朝早く朝霧に包まれた道にいた。
誰もいない公園の入り口の柵に腰かけて。

目の前の道路を通る車はない。


「寒い」


器用にも柵の上でしゃがむ少年が言う。

学ランの下は長袖のパーカー。


「そっか、龍秋、寒いのか!
 じゃあ、俺の上着貸してやるよ」


言って、いそいそと袖を捲った学ランを脱ぎ始める相方に、
少年・青東龍秋は厭そうに顔をしかめる。


「バッカですか、冬は。見てるこっちが凍えるんで止めてください」

「? 俺、別に寒くないぞ?」


きょとん、と首を傾げるのは、西白冬虎。

そんな冬虎に、龍秋は大きく息を吐く。

「あぁ、幸せが!」と騒ぐ冬虎を無視し、
目の前の道の左右を確認する。

車の影も人の姿もない。

次いで公園の時計を見遣り、息を吐いた。


「連絡ありました?」


学ランを着直していた冬虎は、
右のポケットから携帯を取り出し、首を振る。

それに、自分の携帯を確認する龍秋。


「まったく、そろそろ行かないと遅刻ですよ。
 僕、藍原さんに怒られるの嫌なんですけど」

「じゃあ先行くのか?」

「そうですね、3分経っても連絡なかったらそうしましょう。
 冬、走れますか」


おう! と返事をした冬虎に、
龍秋は鞄の中から金具のついたロープを手渡す。

迷うことなく、冬虎は自分の腰に回し、金具を止める。

そのロープの先、電車のつり革のような持ち手を龍秋が持つ。

さながら、龍秋が冬虎を連行したような形になる。


柵の上から飛び降りた龍秋は
傍に立て掛けておいたスケボーを手にかける。

前にあったエナメルの鞄を後ろへとずらし、
歩道に置いたスケボーに足を乗せる。

時計を確認し、メールを確認し、
「時間です」と一言。

冬虎は地面においていたスクールバッグを背負い、
龍秋の前に立つと、ロープがしっかりと繋がっていることを確認し、
その場で数回軽く跳ねる。


「っし、行くか!」

「おkです」


冬虎が走りだし、ロープで繋がる龍秋も地面を蹴り、
冬虎に引っ張られて龍秋も進む。


路地を曲がっても人は少なく、変わらず冬虎は走る。

後ろの重さは気にならないようだ。


「今日からさー、」


走る冬虎は、肩越しに振り返りながら言う。


「今日から新入生? 来るんだっけ?」


右手で持っていた持ち手を、左へと持ち直しながら龍秋は頷く。


「そうです。
 だから、遅刻したらいつもの倍叱られますよ」


そっか、と冬虎。

通りに出ても、車の往来はほとんど無い。


「僕たちがプラス制限付きなので、今年はマイナス制限です。
 だから、入部少ないって聞きました」

「先々週からさ、入部体験で俺ら出れなかったじゃん、
 超久しぶりだよな!
 もっと早く1年と会えたら仲良くなれたのに!」

「それは、僕らがプラスだからですよ。
 藍原さんの話聞いてなかったんですか」


はぁ、と溜め息を吐く。


と、隣の車道を自転車が通り過ぎた。

キャリアに運転者に背を向けて座っている茶髪が、ひらひらと手を振った。

制服はどちらも、龍秋と冬虎と同じ。

冬虎は嬉しそうに手を上げてぶんぶんと振り返し、
少し先の赤信号で自転車が止まると、
少しスピードを上げて駆け寄った。





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