無題

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……暖かい。


「…………」


ここは、僕の部屋…………?


「大丈夫ですか、結高」


結高?

――――あぁ、僕か。


「ったく、テメェなぁ!
 帰ってくんのはいいが、家の前でぶっ倒れてんじゃねェよ!!」


倒れた?
僕が?


「…………ごめんなさい」


僕はまた、彼らに迷惑をかけたのか。


「あ゙ぁ!? 聞こえねェんだよ!」


…………ウィル、うるさい。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ、ウィル。
 最終的に、ドアの角で結高にとどめ刺したのは貴方じゃないですか」

「うっせェ!
 だいたいテメェは――――」


何してたんだっけ。


確か、仕事で1人殺って……。

疲れてるし、雨が強くなってきたから帰ろうとして…………。

そのあと覚えてないな。


ウィルの言い方から、
僕は自力でココまできて、倒れてたらしい。

最後にとどめを刺したのはウィルって言ってるけど、
辿り着いた記憶がないから、無意識で、か。

今さら僕は、こんなところに執着して……。


あぁ、それより、残ってる仕事しないと。

確か、イタリアはナポリだったから、今の僕でも…………。


「――――っておい!
 テメェどこ行きやがる!!」

「………………仕事」

それ以外に、僕がするコト、ないんだけど。


「ダメですよ!
 寝ていてください!」

「…………」


フローに簡単に押し戻された。

今の僕に、耐えるほどの力はないのか。


「結高、残ってる仕事はどこですか?」

「……ナポリと、ボルドーとロンドン」

「じゃあ、とりあえず、
 イタリアの分はやって来ますから、結高は寝ててくださいね」


フローは優しい。

ウィルと違って。


「というわけで、行きましょうか」

「ンでだよ!
 勝手に決めんな!!」

「何か不都合でも?」

「俺が!
 こいつの!
 尻拭いなんて!
 やるわけねェだろ!」


やっぱり、僕が行った方が早い気がするんだけど。


「同じ班じゃないですか。
 助け合わないと」

「助け合うかっ!!」

「ほらほらー、行きますよー。
 ――――結高はおとなしくしていてくださいね。
 すぐに帰ってきますから」


助け合うなんて、そんな。

僕はいつだって、助けられるだけじゃないか。

あの時だって、いつだって、誰だって


――――5年前だって。


僕はあの子のことさえ、
助けられなかったじゃないか。


「…………」


あぁ……。

確か、資料整理も任されてたような…………。







――― end.

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