無題

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「テメェ、クソガキ……。
 何、部外者連れ込んでんだ!
 そいつ誰だ!」


ウィルは帰ってきて早々、言った。
うるさいな。


「平原大地という。
 拾った」

「拾ったぁ!?
 また使えねぇやつ拾って来やがって!」


使えるかどうかは、使ってみないと分からないじゃないか。


「僕の下にする」

「あ゙ぁ!?
 テメェの下にする!?」


 …………。

何でいちいち復唱するんだよ、うるさいなぁ。


「っざけんな!!
 これ以上、養えるか!! バカ!!」


言われると思ってたよ。


「ンだよ、コレ。
 どっから出てきた」


ウィルは僕が置いた財布を不思議そうに見る。


「拾った」

「拾ったぁ?
 嘘吐くな!
 何で財布が5個も6個も落ちてんだよ!
 しかも大金入ってっし、血痕までついてんじゃねぇか!!
 お前はアレか! スリなのか!
 いや、むしろ、金銭目的の通り魔か!!」


…………。

肩で息するくらいなら、
叫ぶのやめればいいのに。


「おい! 何か言えっ!!」


そもそも、
どうして僕が怒鳴られないといけないんだ。


「テメェ! コラ!
 聞いてんのか!?」


どうせお金の話になるって分かってたから持ってきたのに。

怒らないで誉めるところだろ。
別にウィルに誉められても嬉しくないけど。


「結高、結高」

「?」


何をそんなに慌ててるんだい、フロー。

ん?
ウィルが? 何?


「人の話を聞けぇぇえええ!!!!」


……うるさいって。


「何?
 ウィル、何て?」


フローに聞くと、小声で教えてくれた。


「このお金、
 どこでどうやって手に入れたんですか?」

「お金がないと言われると思って」

「それで、どこから?」

「近くにいた人」


しれっ、と言うと、
またウィルが騒ぎ出す。


「だから!
 テメェはスリか!!」


そんなわけあるか。


「近くにいたって……、
 ちゃんと話し合ってもらったの?」


首を左右に振る。


「裏の人間だったから大丈夫」

「大丈夫じゃねぇ!」

「表の人間に執着していたから大丈夫」

「大丈夫じゃねぇ!!
 対象以外は勝手に殺すな!」


うるさい。本当にうるさい。


「あ、あの……。
 オレ、迷惑だったら……」

…………ウィルがうるさいから、
彼が気を遣い始めたじゃないか。


「とにかく、何がどうであれ、
 僕が彼を下にすると決めた。
 僕が決めたから、ウィルには関係ない。
 “大将”には僕が説明する。

 ――――平原大地、こっちだ」


平原大地に声をかけて、リビングを出る。

確か、一部屋空いていたはず。







――― end.

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