無題

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平原大地の身の回りのものを買っている途中、
僕の仕事の対象者を見つけた。
変装はしているものの、
気を張りながら歩いていることからすぐに分かった。

平原大地がパソコンを買いに行っている間に、
僕は仕事をしよう。

対象者の後ろを、気配を消しながら付いていく。

人気のなくなった場所で、後ろから声をかける。


「オルディネです」


ピタリ、と対象の足が止まり、
そしてすぐに走り出した。

対象者を追い越し、前へと回る。


「裏の秩序を正させていただきます」


刀を抜いて、刀身を向ける。

対象者は逃げることなく、己の武器を取り出した。
ナイフだ。

数本のナイフが男の手から放たれ、僕に向かう。

僕は刀身でそれを弾き、
すぐに相手の前へ踏み込んだ。

下から刀を上げると、それはナイフに止められた。

一瞬力を緩め、再び力を込めてナイフを弾く。

数歩退いた対象は新たなナイフを取り出した。

再びナイフが飛んでくる。

それを避ければ、別のナイフが来る。


一向に狭まらない、
むしろ開いている気さえする間合いに嫌気が差して、
ナイフを避けることをやめて、
構うことなく距離を詰める。

何本か、顔や着物を掠めたが、
気にせず対象へ刀を伸ばす。

切っ先が的確に対象の首に触れた。

躊躇うことなく、力を込めて引く。

鮮血が舞った。

服に付かぬように距離を取る。

刀を払って収める。


流れ出る血液が流れを止めた頃、
それに歩み寄り、確実な死を確認する。

確認ができれば、懐から1つお守りを取り出し、
対象の手へと握らせる。

胸の前で手を合わせ、


「お疲れさまでした。
 貴方の命が、無事に神の下へと送り届けられんことを願って。
 おやすみなさい。
 そして、いってらっしゃい。
 お気をつけて」


呟いて、平原大地と別れた場所へ戻る。

すると、ちょうど反対から、


「結高さん!」


平原大地が駆けてきた。
その手にパソコンらしきものはない。


「買わなかったのかい」

「はい、あまりいいのがなくて」

「そうかい」


マンションへ向けて歩き始めると、
平原大地は隣にならんで言う。


「結高さん、どうしたんですか?
 怪我してます」

「仕事をして来たんだ」


そう言うと、
そうですか、と答えが返ってきた。







――― end.

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