(仮)

□第3話
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「ねぇ、何があったの?」

「売られたケンカは買う主義だから」

「意味わかんねー」

「分からないように言ってるから」

「………俺がいない間に何があった………」


少年、睦月の問いは青い空へと吸い込まれていった。




















20分前。


少女、如月と睦月がこの町に到着した。

そこから2人は別行動をとることになった。


睦月は乗ってきた車を停める場所を探して町へと行き、
如月は先に標的(ターゲット)がやってくるはずの丘(ココ)に来た。


如月が木陰で本を読んでいると、


「今日は1人か?」

男の声が降ってきた。


「…………」


顔を上げると、10人の男がこちらを見ていた。

如月は再び本に目を落とし、読書に戻る。


「おいおい。無視かよ。無視なのかよー?」

「…………」


無表情でこちらを見向きもしない如月に、
男たちに少しづつ怒りが募っていく。


「……黙ってんじゃ、」


リーダー的男の制止も聞かず、
1番若い男は如月に銃を向けた。


「ねぇよっ!!」


男の声は銃声にかき消された。


しかし、男は引き金を引いていない。

というより、引く前に命は絶えた。


「読書中です。静かにしてください」


如月はパタリと本を閉じ、
ゆっくりとした動作で手元のカバンに仕舞った。

いつの間にか左手で持っていた銃の銃口からは
薄く煙が上がっている。


「き、貴様………!」


男たちは次々と己の武器を如月に向けた。


「ちょっと、落ち着いてくださいよ。
 ボクは正当防衛です」


如月の台詞でリーダーは仲間に制止を促す。

そして、言う。


「貴様らは今日だけでなく、
 今までも俺たちの仲間を殺してきた。
 忘れたとは言わせない」

「はて……?
 何のこと―――あぁ、思い出しました」


ポンと手を打って、如月は続ける。



「身の程も弁えず、
 ボクたちにケンカを売ってきた人たちのことですね?」



「!」

「なんだ、そのおバカさんたちみたいに、
 貴方たちもボクたちにケンカを売るんですか」

「確かに何も考えず銃を向けたアイツらはバカだろう。
 しかし、今、貴様は1人だ。
 睦月を相手にするよりは遥かに簡単―――」

「そうですか。ボク、間違ってましたね」


男の言葉を遮り、言った。


「皆さんは、ボクたちではなく、
 ボクにケンカを売るんですね?
 分かりました。
 売られたケンカは買う主義です。
 でも、1つ改めさせてください」

「?」

「いつもは睦月が目立ってますけど、
 自分で言うのもアレですが、睦月より、
 ボクの方が上ですよ?」

「!?」


パンパンパンパンパンパンパンパン。


言い終わるのと同時に、
右手に新たに持たれた自動式の銃が火を吹いた。


計8回。


これで、この丘の上にいる生きた人間は、
如月とリーダーだけとなった。


「…………」


後ろでドサリドサリと倒れていく仲間の音を聞きながら、
リーダーは冷や汗を浮かべている。


「ま、待ってくれ……!」

「何ですか?」

「俺は話し合おうと思っ―――」


ズドン。


「命乞いは無様です」


まだ熱い2丁の銃は仕舞わず草の上に置く。

そして、本を開きながら、


「遅いなぁ……」


呟いた声は、如月の耳以外、
誰の耳にも届かなかった。


目の前の死体を気にせず、
読書に没頭する如月。


やがて、下の道に続く階段から、
睦月が現われ―――

冒頭に至る。






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