絆 -きずな-

□第6話 歓迎会(前編)
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「ひっばりぃ!!」


早朝、クロス本部。

金髪がとある部屋の扉を勢いよく開けて、中に飛び込んだ。


「おはよう、雲雀! 朝だぜ、朝!」


中で扉に背を向けるようにいた黒髪――――
西条雲雀に走り寄って後ろから飛び付く。

朝風呂に入ったのか、
雲雀の高く結い上げられた髪は濡れていた。

その頭を遠慮容赦なくバシバシと叩く。


雲雀はそれを振りほどいて、
着ている着流しの襟を整え、腰ひもを締め直す。

ゆっくりと振り向いて、金髪――――
雨宮凍弥と向かい合う。


「……おはよう」


言った。

凍弥は
「おはよう!」と再度返しながら、雲雀のベッドに飛び込んだ。


「凍弥、お前、もう少し静かに登場できないのか」

「何でー?」

「至極五月蝿い」


そっかー、と言いながらベッドに寝転ぶ。

枕に頭を埋め、


「じゃあ寝るー」


言った。


「おい。お前は何しに来たんだ」


雲雀が本棚から読みかけの本を取り出し、
その背で軽く凍弥の頭を叩く。

凍弥は俯せになっていた顔を起こし、雲雀に向く。

「そうそう、そうなんだよ」
と言った。


「歓迎会だってさ」

「歓迎会?」


椅子に座った雲雀はそっくりそのまま繰り返す。

怪訝そうに眉を寄せた。

凍弥が起き上がる。


「そ。歓迎会。新規採用くんをみんなでお祝いしようぜの会」

「そうか」

「この前、あきと一緒にいたの見た。
 黒い髪だったから、雲雀とおんなじ日本人だなー、って思ったー」


パタン、と凍弥が再びベッドに横になる。

雲雀が本のページを捲る。


「指導係があきで、一昨日に仕事から帰ってきて、すぐにあきが寝たから、
 起きてくるのは昼過ぎだろうって直くんが言ってたって司令が言ってたから
 昼過ぎからやるって大和が言ってた」

「くどい」

「あきが引き込もって寝てるから、
 歓迎会はあきが起きてくるだろう昼過ぎ開始」

「そうか」

「そう。だから、オレは寝る。おやすみー」

「おやすみ」


言って、雲雀はページを捲った。

それを機に2人の会話は途切れた。


時計の針が一周した頃、
雲雀が本から顔を上げた。

ベッドの凍弥を見て、


「どこでやるんだよ」

呟いた。

その呟きに、


「談話室ー」


凍弥が片手を上げ答えた。







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