絆 -きずな-

□第9話 波風
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「あーっ!! あき帰ってきたー」


談話室に戻ってきた光に
凍弥が後ろから飛び付いた。

10cm強の身長差があるので、凍弥の顎が光の頭に乗る。


「重い」

「今なー、アカデミーの話してたんだけどー」


光の一言に凍弥が光から離れた。

そして続ける。


「あきはアカデミー行ってないんだっけ?」

「……さぁ?」


直樹からリンゴを受け取った光が、
リンゴをかじりながら言った。

それに「え?」と一星が首を傾げる。


「沖田さん、行ってないんですか?
 ココに入るには、強制じゃ……?」

「へぇ。初耳でさァ」


興味の欠片もない声で光が言って、
その頭を直樹が叩いた。

「ちょっと」と言って、直樹は光の腕を引く。


凍弥たちから離れたところに行き、
再度頭を叩く。


「バッカ、お前。前に教えたろぉが」

「忘れやした」

「大馬鹿。
 本部に入るにゃ、アカデミー卒業しなきゃなんねぇの。
 アカデミーの各国支部に10歳から入って、12歳で本入学試験。
 合格者が日本中央部に集まって、
 武闘専攻、医療専攻、科学専攻、非戦闘専攻に分かれて勉強。
 んで、16歳で卒業、採用試験ってわけ」

「大変ですねィ」


それで?
と退屈そうにリンゴをかじる光。

直樹は大きく溜め息を吐く。


「だから、お前はとことん異色。アカデミー行ってねぇし。
 俺だって本間だって行ったんだぜ?
 しかも、ここは16歳からしか入れねぇ。
 お前はそこでも異色、ってわけだ」

「ふーん」

「お前の話してんだよ、アホ。
 何だその相槌は。ったく……。
 まぁ、お前は七光りってのもあるからな。特別だよ、特別。
 ちゃんと“あの人”に感謝しろよ?」

「んー」


リンゴを租借しながら光が頷く。

直樹が再び息を吐いた。


そこに、


「沖田、仕事だっちゃ」


大和が携帯片手に来た。


「鈴城と雪姫ちゃんと」

「ん」


短く答え、光はゴミ箱にリンゴを捨てた。

先に外に出ていた一星たちのところへ向かう。









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