旋律の刄

□頼み
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暗闇の中に少女と青年が立っている。少女は真っ黒なワンピースを着ていて、金色の腰までロングヘアーで。緋と蒼の異なる色をした悲しげな双眸がしっかりと青年を見つめ、射ぬいている。
「ここはどこなの?」
少女は厳かに青年に問いかける。



「ここは君の心の中だよ」
ふわり優しく微笑み青年は表情にあった口調で返答する。
17歳位の青年は白のカットシャツに黒いズボンを履き黄金色の長い髪は一つに束ねられていた。




「私の…心の中!?」
目を見張り少女は驚いたようだったが、それも一瞬で収まる。
自分の内にそう簡単に入り込める筈がないと確信してい
たらしい。
だが彼は、いとも簡単にそれを破った。



「ここにはどうやって入ったのよ?」
少女は未だに厳かなまま問い掛ける。



「それは簡単さ。君の心にリンクしたから入れたんだ」
優しく微笑みを崩さないまま、青年は問いに答える。



「君の心にリンクしたから入れたんだ」
と青年は少女に優しく言った。
「私の心に…」
ぼそりと少女が呟く。
感情が欠落している少女の心にリンクするのは相当な魔力を使うはずなのに青年は簡単にやってしまった。



「君に頼みたいことがあるんだ」
青年が少女に言う。
青年の顔はどことなく少女に似ていた。
そして少女は理解した。
今の現状を。そして彼が何者なのかも。



「私に、頼みたいこと?」
自身には何も出来ることがないというのに。
だが頼んできた青年の正体を知っているため、彼女は引き受けることにした。




「この国のこ……う……………」
青年の言葉は所々切れていて、うまく聞き取れない。
だけど少女はなんとなく察した。
青年がした頼みはきっと果たされないだろう。
少女のが一番それを知っているのだから。



「も…じ…ん……い」
青年は少女に手を伸ばしたが、届きそうなところで消えてしまう。
残された少女は一人ぽつんっと立っていた。
 

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