旋律の刄
□双子
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燕准に犯され日から数日が経とうとしていた。
彼はあれがいつも通り接してくるが逆にリリアーはそれが恐ろしかった。
事情最中の彼の双眸は狂気がかっていてそれがリリアーに抵抗させないでいた。
否、彼の容姿がリリアーの初恋の人に似ていたから抵抗しなかったのかもしれない。
容姿が似ていてもあの人はもう死んだのだ。
「…あうっ………ご、ごめんなさい」
考え事をしていて前を見ずに歩いていたら誰かとぶっかった。
「てめぇー!ってお前かよ」
肩までの白銀の髪に赤い双眸の青年はぶっかった相手の顔を見て怒鳴ろうとしたがリリアーの顔を見てすぐにやめた。
「永久…?どうしてここに?」
目の前にいる人物を不思議な顔して見ているリリアーの鼻を摘まむ。
「どうしてってお前らが心配だから追い掛けてきたんだよ」
「……うっ………鼻!鼻を摘まむな!!」
「はいはい………てかさ知ってる?帝国ではお前死んだことになってんだよ。まあ俺もだけど…」
永久はポツリと悔しそうに呟いた。
「えっ………じゃあ、今の皇帝は誰なの…!!」
知らされてなかった事実に驚愕する。
「元老院の中の誰かじゃね」
政治の事なんか永久には興味すら無かったから面白くなさそうだった。
「元老院か。あいつらは手強いからな」
考え込むようにリリアーは目を瞑る。
元老院は全員で7人その中でも一番手強いのがヒューダスという名の男。僅か12歳で最年少の元老院になった秀才であり剣や魔法の腕も確かな男だった。
リリアーがもっとも敵に回したくない人物でありリリアーの秘密を知っている一人だった。
「お前さ、あいつらと戦おうって思ってないよね?」
「何を言ってるんだい永久。私は戦うよ」首から大事そうに下げている白いペンダントをリリアーは握り締め決意を表す。
「俺は手伝わんからな。面倒なことには巻き込むな」
「…ニート…」
ぼそっと永久に聞こえないように呟く。
「聞こえてるからなクソガキ!」
顔は笑ってるけど目が笑ってなくてとても不気味だった。
「まあ、いいやとりあえずアル探さないと!」
「ああっ、末っ子か」
「そう、末っ子くん。永久も探すのは手伝ってくれるだろ?」
首を傾げて永久に問う。
「それぐらいなら手伝う」
「ありがとう」
にっこりと永久に笑いかける。
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空が夕闇に染まる頃二人の男がいた。
一人はサラサラな黒髪に右目は碧で左目は緋のオッドアイの双眸。
そして彼が身に纏っている黒い服はところどころボロボロだった。
もう一人は隣にいる男より長身でコウモリの様なヴァンパイア特有の翼がある。
ふと黒髪の青年が口を開いた。
「あいつの気配がする」
「そうですか。行きますか?」
「うん。早くあのことを伝えないと」
二人は速足の早さで皇仙国に向かう。