さよなら現実また明日

□あなたに会えて
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花香が次に地に足をついた時には、目の前に一軒家があった。一軒家の外見は普通で、「赤司」と苗字がちゃんと表示されている。
鍵を胸元から取り出して扉を開ける。中は静まり返っていた。玄関に靴がないことからして、両親はまだ帰宅していないのだろう。

赤司「ここが僕の家だ。」
『はあ…。』
赤司「君にはこれを常備してもらう。」

電気を付けて投げ出したのは鍵だった。
その鍵はこの家のスペアキーで、花香は今日からこの鍵で出入りをする。既に赤司の中では決定事項だった。

赤司「部屋は2階の空き部屋を使え。あぁ、衣服類は心配しなくていい。」
『…意外と用意周到なのね。』
赤司「当たり前だ。」

 得意げな赤司を不思議そうに見る花香。そんな彼女の胃袋がゴジラの鳴き声のような悲鳴を上げた。どうやら安心と共に現れた空腹の合図のようだ。
間の抜けた音に花香ははっとしたような表情でお腹を抱え、赤司はぷっと笑い出す。

赤司「お腹、減ってるのか…?」
『しょ、しょうがないでしょ!ろくに飯食ってないんだから!』

赤司は必死に笑いを堪えるように後ろを向き、花香はムキになりながら仕方ないと訴え続けていた。
彼は笑いを抑え込むように台所まで早足で駆け寄り、即興に作るから座ることを促す。納得のいかない表情のまま大人しくテーブルの前に座った。
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