闇に紛れて君を探しに
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赤司が車に轢かれた―
「え?」
電話から聞こえてきた言葉に思わず聞き返してしまった
話し相手は緑間君
休憩中に電話がかかってきたので出てみれば、第一声がそれだった
赤司君が轢かれた?
「も、もう一度言ってもらえますか?」
ああ、携帯を持つ手が震えてる
多分声も震えてるのだろう
『…赤司が、車に轢かれたのだよ』
心なしか緑間君の声も震えているようだ
でも、そんなことに気づけるほど僕は冷静じゃなくなっていた
電話をしていることも忘れ、ただそこに立ちすくんでいた
帝光時代、いつも厳しかった赤司君
将棋がとても強かった赤司君
いつでも僕らのことを考えてくれてみんなの頼りになる赤司君
そんな赤司君が轢かれた?
『…おいっ、黒子!!』
携帯から聞こえてきた緑間君の声で我に帰る
「そんな…そんなバカなことないでしょう…っ」
僕の様子がおかしいことに気付いたのか、何人かがこちらを見ている
だけどそんなことを気にしていられるほど僕に余裕はない
『…赤司の搬送先だけ伝える。落ち着いたらお前も来い』
○○病院だ、そう言って緑間君は電話を切った
プープーと無機質な機械音だけが聞こえてくる
「どうしたんだよ黒子」
火神君が心配そうに顔を覗き込んできた
全く同じとは言わないけれど、火神君の赤髪が嫌でも視界に入ってきて赤司君を思い出す
そして電話から聞こえた認めたくなんてない事実
もう、火神君の言葉も耳に入らない
「すみません…っ」
火神君を押しのけ更衣室へ向かう
カントクには後で説明すればいい
僕を止める声なんてそっちのけで服を着替え
そこに置いてあったカバンをひったくって学校を出る
向かう先は赤司君のところ
僕は無我夢中で走っていた
こんな日が来るなんて思わなかった
(きっと君もそう考えているだろう)
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