Short story

□滑舌
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最悪だ。
泣きたい

「・・・うぅ〜」

ベッドの上で体育座りをして、
自分の膝に顔をうずめる

「どーしたの、名無しちん元気ない」

家に来ていた紫原君に聞かれる。

「・・・文化祭の出し物。
 私のクラス演劇なんだけどね
 主役に抜擢されてしまったんだよ」

「え?いーじゃん、」

「やだよ」

「なんでー」

「私かちゅぜ・・・うん。」

「・・・そーいうことね」

ふっと紫原君が笑う。
そう、私は滑舌が悪いのだ。
未だに「滑舌」をかまずにいえたためしがない。

「舌が・・・回らないんだよね・・・」

そうつぶやくと、
紫原君はなにか思いついたかのように
はっと顔を上げた。

「俺、舌がよく回るようになる方法しってるよ」

にやにやとしながら言う。
いや、でもそれは私が疑ってるからそう見えるだけで
もしかしたら純粋に私を助けたいだけかも・・・

「ホント?教えて」

「うん、いいよ」

そういうと同時に、
紫原君は私の後頭部に手を回し
私の唇と紫原君の唇をくっつける。

「・・・っ!!」

紫原君の胸を押して必死で抵抗するが
案の定びくともしない。

「んぅ、ふ・・・」

そうこうしているうちに舌をいれられる。
紫原君の舌はすぐに私の舌をつかまえて
ふたつを絡め合わせる。

「・・・は、ぁ」

私の抵抗する力も弱くなってきたところで、
紫原君は唇を離した。

「どお?」

満足そうな笑みをみせながら聞いてくる
私はその笑みが憎たらしくなってきて
怒ったように言った。

「こんなことで滑舌よくなるわけないでしょ!!」

あ。
言った瞬間自分で思う。
危うく言いそうになり、紫原君が調子にのるかもしれない
という危険を察知して口を押さえた。

「・・・あ、滑舌っていえてるじゃん」

・・・バレた。

「・・・気のせいだよ」

「絶対言った。効果あるんじゃん」

嬉しそうに笑う。

「じゃーもっかい」

「ちょ、やめてよっ」

「やーだ」

また口をふさがれ、
すぐに舌が入ってくる

「んんっ・・・ふ、ぁ」

心臓がどきどきして
顔が熱い。

「も、やめ・・・」

「名無しちん声エロすぎ。誘ってんの?」

「ちがっ・・・」

紫原君は私の首筋を甘噛みする。

「やめて、てっば、ぁッ」

紫原君の腕を掴んで抵抗する。
だけど腕に力があまりはいらなくて、
元からの力の差もあって紫原君にとっては
抵抗だとも思われてないかもしれない。

「・・・今更やめるとか無理」

紫原君は顔を上げ、
舌なめずりをして
私のまだ触られたことのないところへ手を伸ばす。

「んっ・・・だめ、だってッ」

「いーじゃん、べつに」


深く、堕ちてゆく。

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