妄想なのである。2

□ドタバタ〜過去編〜
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「パパ。」

「りゅうどした?
春休み満喫してるか?」

「満喫かどうかはわからないけど、楽しんでるよ。
質問なんだけどいい?」

「うん。」

「パパとママってどこで知り合ったの?」

「…。そんなこと知りたいのか?」

「いや、ちかたちと話てて、親の話になったんだ。」

「ふーん。」

「でね。ちかんところの両親はね、お見合いらしいんだ。
ゆうきは、幼なじみだったらしいけど。」

子供ってなんでも親に喋っちゃうからな。

「そうなんだ。てか、あんまベラベラ言うなよ。」

「ん?なんで?パパにしか言わないけど。」

「そうなの?」

「ママに言ったら、いろんなところに広がるでしょ。」

「その通りだな。」

「でね。僕一応恋愛だと思うって言ったんだけど、実際どうなのか、僕何も知らないなぁって。」

「あぁ、恋愛結婚だよ。」

「どこで知り合ったの?」

「美容の専門時代。
さえちゃん学校の先輩だったんだよ。
さえちゃんはエステだったけど。」

「そうなんだ。詳しく聞きたい。」

目キラキラにさせて言われてもな。

「忘れたよ。んな昔のこと。」

「ケチ。」

「ケチっ?ひどいなぁ。」

べつに忘れたわけじゃないし、言えないわけでもない。

でも、なんだか恥ずかしい。

「んー、ゴメンなさい。」

「素直でよろしい。」

りゅうの頭を撫でてから、キッチンで夕ご飯作っているさえちゃんに抱き着きに行く。

「キャッ。何すんのよ。」

「さえちゃん、ぎゅー。」

「離れて。子供たちいるんだから。」

「はいはい。」



少し疎ましそうに俺を見るさえちゃん。
でもその中にちゃんと愛しさがあることを、知っている。

きっと一生で一度の本気の恋。

初恋みたいに甘酸っぱくないし、
大人の恋みたいにビターでもない。

そのふたつをゴチャゴチャに混ぜたみたいな、俺の大切な恋。
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