捧げ物
□エデンの園
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白い、世界。
壁も床も天井も。
シミ一つない全てが白一色に統一された部屋。
窓は無く、差し込む光は蛍光灯の人工的な明かりが照らす不自然な程に白い空間。
其の部屋の中央に置かれた白いベッド。
上に横たわるのは、唯一の赤。
真っ赤なコートを身に纏い、炎の様に赤い髪を持つ青年。
・・・まるで童話に出てくる眠り姫のように、昏々と眠るその姿は酷く造形的で、美しい。
そっと其の白い頬に触れる。
己の冷たい指とは対照的な温もりを感じて、
人に触れる事も触れられる事も厭う自分は、初めての他人の体温に戸惑う。
「・・んぅ・・」
僅かな身じろぎの後、ゆっくりと長い睫毛が持ち上げられて金の瞳が自分を映す。
「ハッ、お目覚めは如何かな、お姫様?」
「っ・・最悪。」
心底嫌そうな顔で悪態をついてみせる青年。
逃げられない様にとベッドに繋ぎ止めた手足が彼の自由を奪う。
その赤いコートの前をはだけて、黒いシャツの裾をたくし上げる。
「離せっ・・。」
覗く白い肌に残る幾つかの傷跡。
先程自分が付けたソレを一つ一つ、確かめるように指でなぞる。
・・・やはり、彼には赤が良く似合う。
そのまま誘われる様に赤く濡れたその唇に噛み付く。
「・・・っ・・・」
ぷつりと零れ落ちる赤い雫がその白い顎を伝う様はとても扇情的で。
まるで禁断の果実の様に甘美なその味はクラクラと自分を惑わす。
―――どうせ彼はもう此処から逃げられはしない。
このまま二人共にどこまでも堕ちてしまおうか・・・・・?
心の求めるがままに、もう一度その唇に口付けた。