中編・短編

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「グロリアーナ、栄光ある者よ。俺はお前に全ての地位を約束しよう」

跪き、甲の手に忠誠を誓うキスを送るその男の姿は絵になった。光る金髪の髪、大地を色づかせるグリーンの瞳。男の忠誠に答え、女王は言った。夫たる貴方に、最高の地位を約束する、と。
男は深いグリーンの瞳を光らせ、ほくそ笑みを浮かべる。

―――俺の女王。俺の、妻。

男は凛としたその女性、後に黄金時代の統治者と語られるようになった女王―――エリザベス一世に、恍惚な表情を見え隠ししながらも男は女王の顔を見た。
色白の肌、愛らしい赤毛、己と同じ、深いグリーンの、思慮深い知的な瞳。あぁ、俺の女王はいつにもまして美しい。政治を行う際のその凛とした表情も、普段見せる愛らしい笑みも、時折見せる恥らいの顔も。全て貴女は、お前は美しい。我が女王エリザベス。
女王万歳、国民はお前を称える。お前のその偉大さを、美しさを。それが嬉しくもあり、憎らしくもある。

―――俺は、お前の物だ。女王よ。

男は跪いた姿勢から立ち直り、女王に向かい一度お辞儀をする。女王はそれに応えるように、笑みを浮かべた。

―――私のイングランド。今日もまた、行くのですね。

果てなき海へと。
女王の声は、どこか沈んでいた。
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