少女よ翼を抱け
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―――死んだと思っていた自分は、今。
『・・・生きてる』
ジャングルの様な場所に放り出されて。
* * *
ジャングルの様な森・・・時折猛獣の唸り声や、声が枯れたような鳥の鳴き声。
広がる景色は巨木ばかり。数十メートルを優に超えるその巨木達の先は、見えそうにもなかった。
巨木の枝に茂る青葉のお陰で、このジャングルには日差しと言うものがあまり差し込まないらしい。おかげで体は冷え、少し寒いくらいだった。
『さむっ・・・!』
しかしどうしたものか、何故自分はこの様なところに居るのだろう。
(・・・確か、)
―――確か私は、あの時久しぶりに新刊が出た漫画を買いに行く為早足で書店に向かっていたらトラックと交通事故に遭った筈だった。
そう、あの時。私が死ぬ前。私は運悪く大型トラックと衝突し交通事故に遭った。
その証拠に身体にはまだその時の痛みは残っている。思い出したくもない激痛が。だが、不思議な事に傷は無かった。
服にも、血の跡は付いていない。
『誰か・・・誰かいませんか〜・・・』
明らかにこんな声では誰も届かないだろうと言う声で、言ってみる。
聞こえる筈もない、ここに人が住んでいるとは到底思えないからだ。
先程から結構な距離を歩いている気もするが、ここは何分広過ぎたらしい。
目覚めた直後は慌ただしく「ここどこ!?」や「いやここ地獄?!」とか「私悪い事してません閻魔様ぁああ!」なんて叫んだものだが。
・・・どうやら落ち着いてみれば自分は案外冷静になれるらしい。流石私。鍛えたゲーム脳はこういう時に発揮されるらしい。
―――どうせなら家に帰してよぉおおおお!
『・・・ぐすっ』
やばい、涙出てきた。ここは怖すぎる。こんな暗い所女独りでほっつき歩くと言う点からして可笑しいのに、その上猛獣らしき鳴き声も聞こえるなんて。
せめてもの幸いはその猛獣たちが寄って来ない事くらいのものだが。いやそんな事はどうでもいい。こんな所で放置されている事自体可笑しい。
どうやら神様と言う存在はSな気質のようだ。マルキ・ド・サド顔負けのサディスティック気質。
いや、どんな神様だよ。
『あーもう・・・ここやだ・・・』
死にたい、これは死にたい。
―――そう思った時だった。
「―――動くな!」
『ひっ・・・?!』
気付いたのも束の間、私の首元には冷たいナイフが当てられていた。