少女よ翼を抱け

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男はドスの聞いた声で、言葉を放つ。



「ドフラミンゴの手の者か・・・?」

『わ、わたしフラミンゴに親戚なんていませっ・・・』

「・・・ふざけているようなら、殺す」



いや、これは結構真面目だったんだ。本当に。
しかし男には伝わらないらしく、徐々に迫るナイフの冷たい温度と、刃。
背後から迫られ、拘束されており首を動かせない状態にある私にはナイフを向けている男の顔を見る事も出来ない。
このまま死ぬのか、大型トラックでは死にきれなかった私は、人間に殺害される事で死んでしまうのか。

―――嫌な考えが、過ぎってしまう。

すると不意に、男が拘束する手を弱めた。



「ならば・・・」

『ぐえっ・・・?!』



突然、背後の男が首に手を回した。その勢いのせいで首に反動で圧迫されてしまった。
しかし、男の手の感触の前に、別のものが当たっている。冷たい鉄の様な、その何か。

不意に「カチャ」という金属音が背後から聞こえた。この音はまるで、金属同士が繋がった様な音だ。



「その首輪を、お前に渡す」

『・・・え?』

「その首輪は、“あいつ等”にも俺の手にもあってはいけない。故に、見ず知らずのお前に託す」

『どう、いう・・・』



―――それはつまり、見つかれば私の命が危ないと言う事ではないか。

そう気付くと私は背後に居る男の方を向き、きっと睨みつける。
男は言葉通りの黒ずくめ男だった。黒いシルクハットに黒いコート、黒いサングラスに、黒いズボン。しかも肌も浅く焼けていた。
まるで絵に描いたような怪しい人間に、私は恐怖を感じながらも、奇妙な目で見つめた。



「言っておくが、その首輪は外れないぞ」

『へ?!』

「その首輪は一度つけられたら外れない。それに持ち主の生命感知機能を持っている。持ち主が死ねば、共に自縛すると言う仕組みだ。

お前が考えている様な事には決してならない」



まるで機械の様にペラペラと喋る黒ずくめの男に、尚恐怖を抱く。
その言葉には一切として感情が含まれておらず、正に機械の様だった。
時折垣間見えるサングラス越しの瞳からは、生気を感じられなかった。

だが私の中ではある考えが浮かんだ。

この首輪は、目の前の男が付けていればいいのではないか・・・?
もしその人間達に追われていて、命惜しさに逃げているなら「これ」を付けていれば殺される事は無いのではないか。
それに、自分の手にあってもいけないと言うのは、些か気になる。

私は男を問いただす様に、聞いた。



『あ、貴方が、付ければいいんじゃないの・・・?!』



震える声で、そう聞いた。



「―――俺は今は死ねない。だが生きる事も許されない。時を待ち、死ななければならない」



男はそう言うと、私の腹部に「とん」と手で触った。



「すまない」



目の前が、真っ暗になった。





黒い男
(ついでに足が長かった)
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