少女よ翼を抱け
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目覚めた当初に見たのは、木陰だった。
『ここ、どこ・・・?』
辺りを見渡せば、先程とは違う場所だと言う事は分かった。
木陰に身を潜めている、と言うべきなのか。今の私はそんな状態だった。
『っ・・・』
まだ腹部に先程の痛みがある、腹部を圧迫されたような、鈍い痛み。しかし殴られた感覚ではなかった。
だが気絶するほどの圧迫感など結局は暴力を振るわれたも同然ではないか。
私は鈍い痛みを腹に抱え、足を立たせる。
『・・・ほんとに、ある』
首周りにある冷たい「それ」に触れる。
見た目は分からない。ただ、金属特有の冷たい温度が伝わってくる。
まるで時限爆弾を取りつけられたような心境だ。いや爆発する訳ではないけど、そんな感じがする。
兎に角、当たりに街が無いか探してみるしかない。
家に帰りたい気持ちは山々だが、正直ここがどこだか、それも同じ世界かも分からない。
―――私は一度、それもさっき死を体験した(多分)。
ゲーム脳なら誰でも考えるだろう。死にかけて気絶した後、見た事の無い風景が目の前にあった・・・。
それはつまり、別の場所に瞬間移動したか。
もしくは・・・
『トリップ、したとか』
いやいやまさか。
私は頭を振り切り、その考えを中断させる。
だが、その思考は中々止まってはくれなかった。
だってそうだ、こんな可笑しい状況だと、日々刺激を求めるゲーマーだった私には、それしか考えられない。
だからって、こんな死亡フラグ見え過ぎるのは喜ばしくないが。
足を動かし、歩く。
『私・・・家に帰れるかな・・・』
ふと呟いてみる。
―――正直、家に帰りたいかどうかと聞かれれば微妙なところが私の心情だ。
あのまま祖父母達の世話になっているのも心苦しかった。親が他界したとはいえ、あの年で私を育てると言うのは大変な事だろう。
だからこそ早く家を出て就職して安心させて、養っていってあげたかった。親が出来ない事を、孫である私が代わりに幸せにしてあげたかった。
『でもこのまま帰らなかったらきっと楽できるよなぁ・・・』
その代わり、悲しむかもしれないけど。
案外自分も自虐的な事を考えるものだな、何て思う。こんな考えは止めよう。
暫く下を俯きながら歩いていると、下を向いていた視界の中に、ここには無い筈のものが落ちていた。
『帽子・・・?』
それは、麦わら帽子だった。使い古した様な痕跡がある限り、かなり古いのだろう。ところどころ、縫い直された跡もある。
まさかこんな所にまで遊びにくる子供がいるとでもいうのだろうか。いやまさか。いたとしたら相当な野生児か命知らずだ。
しかしこれは丁度良かった。これはつまり近くに街がある、という証拠となる。
せっかくだから拾っていこうと私は麦わら帽子を被り、目の前を見つめる。
『絶対・・・街見つけてやる・・・!』
―――しかし、後に私の目の前に死亡フラグが乱立することなど、予想もつかない事だった。