少女よ翼を抱け

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帽子を被り、気合を入れ直す。絶対に街を見つける、その意気込みで私は兎に角辺りを歩いた。
歩数は多くも早さは鈍間。でも気合だけは私の中で突っ走っていた。
首を左右に振って手掛かりを見つけようともしたし、耳を研ぎ澄ませて人の声はないかと探したりもした。

―――その甲斐あってか。



『こら帽子待てっ・・・ってえ・・・えぇ・・・えー・・・ってま、街に着いた?!』



努力は報われず、風に乗った帽子を追いかけていたら街に着きました。
おい、私の努力は無視か。

帽子を引きちぎっていやりたい衝動に襲われるが、祖母に「者は大切にする」という家訓を身に焼き付いている為、私の意志とは反対に手が動こうとしない。
救われたなぼろ帽子と内心毒付きながら、私は街の門へと潜る。



『う、うわー・・・でかい・・・』



先程歩き回った森とは裏腹に、街は活気づいた声で溢れていた。
門を潜れば街並みは昔中学の頃歴史の資料を開いた時に偶然見かけたイタリアの花の都、フェレンツェに似ている。彩が温かく、綺麗な街だ。
月とすっぽん、とはまさにこの事だろう。先程の森はすっぽんで、この町は正に月だ。
兎に角、さっきの森よりかはマシだと思いながら私は街の中に溶け込んでいく。



『うぅ・・・眩しい・・・!』



私がいた森とも、果てには私の住んでいた街とは全く違う。こんな美しい街があっていいのか・・・!
そんな事さえ思わせるここに、私は不意に立眩みを覚えた。人間で言うなら正に美形中の美形、美丈夫とも言えるだろう。
町並みだけで世界遺産に登録されそうなくらいである。

ぼーっとこの街並みに感動を覚えながら眺めていると、不意に人とぶつかってしまった。



『あ、すいませ・・・』

「おいおい嬢ちゃん、人にぶつかっといて、謝るだけで済むと思うなよ?」



まともに見えなかった顔が、徐々に鮮明となっていく。
ガラの悪い男だった。それも元いた世界の不良とはケタが違う。正に悪党・・・と言った様な。



「何せ俺らはあの“王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴ”の傘下の海賊、ビスディータ海賊団だぜぇ?そう簡単に許すってのも、面子に関わるってもんだ」

『え・・・え?』



「海賊団」「王下七武海」。意味の分からない単語が並んでいく。
ドンキホーテは聞いた事ないが、ドフラミンゴと言う単語には聞き覚えがある。この男達の顔面の迫力でどこでだったかは忘れてしまったが。

しかし、このご時世に海賊とはどういう事だろうか。やはりここは私の知っている土地、もしくは場所ではないという事なのだろうか。
・・・それに、ここまで迫力ある顔をした人間など、私のいた世界にはいなかった。



「―――おい、この麦わら・・・」

「どうやらあの糞餓鬼のお仲間みてーじゃねーか・・・。よし、お前を人質にすりゃああの餓鬼も大人しくなるかもなぁ!」

『なっ・・・!』



―――やばい、この状況はやばい。

そう気付いた時には、私は腕を掴まれていた。



「逃げられるなんて、思うんじゃねーよ!」

『いだっ・・・!』



頭に、殴られる激痛が走った。





美しい街へ
(私は殴られに行った様なもんだ)
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