少女よ翼を抱け

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「なあなあ、仲間になれよー」

『黄色の絵の具とって』

「ほい」

『ありがと』



―――こんなやりとりが、3日間続いています。





*     *     *





3日前、トナカイ事チョッパーが私のいる店に来た時。目の前の少年はやってきた。



「俺は、モンキー・D・ルフィだ!チョッパーの知り合いか?」



「モンキー・D・ルフィ」。彼の名前である。

当初人懐っこい笑顔を浮かべていた彼は、私の被る帽子を見るなり盗んだと思ったらしく殴りかかろうとした。
・・・お門違いも良いところである。寧ろ私はこの帽子を助けたというのに。
そう言うとルフィはそうかならいいと直ぐに落ち着いた。
麦わら帽子を返し「有難う、お前良い奴だな」と言いながら、此方に笑みを向けてくる。
少年らしい笑顔だった。

―――しかし、問題はこれからである。



「お前が描いたのか?これ」



私をじっと見つめ、視線を横にやる。そこには私の描いた絵があった。



『う、うん』

「へぇ〜上手いんだな!俺絵の事なんて全然知らねえけど・・・この絵は好きだ!」



爛々と輝くその黒い瞳は、好奇心で満ち溢れており、また何か面白そうなものを見つけた、と語る様な瞳だった。
そして彼は、今の現状の原因となった言葉を放ったのである。



―――お前、俺の仲間になれ!



何のだ、とツッコんだのは言うまでもない。





*     *     *





「なあ、いい加減俺の船こいよ。諦めわりーぞお前」

『いやアンタでしょ。何で私が海賊にならなくちゃいけないの』

「そりゃお前、俺がお前の事気に入ったんだ!」


それに絵も上手いしな。とルフィは付け加えた。
当初、仲間になれと言われた時には驚いたものだが、その詳細を聞いてみるとどうやらこの2人とその他仲間は海賊だったらしい。
海賊、と聞いた瞬間私の脳内に電光石火の如く前の出来事が鮮明に思い出された。そう、あの海賊達から暴行を受けた日の事を。
勿論あれはトラウマだ。そして海賊もトラウマ。そんな奴らの仲間になど普通なる筈もなく、事情を説明し丁重に断ろうとした瞬間・・・



「俺はそんなことしねぇ!」



・・・と言い、それ以降3日間ずっと仲間勧誘が続いていた。
それを簡潔に、簡単に説明しよう。

まず一日目、ずっと店の前で見てくる。流石にあれには耐えきれなかったので自室に籠る。
二日目、別の仲間がやってくる。オレンジ髪の女性で、ナミと言う人だった。
常識人だったらしい。直ぐに退場。

―――そして、3日目。またを今日。



「なあ、そんなに海賊が嫌いか?」

『まあ・・・。なりたいと思って、なるもんじゃないとは思う』



現実世界に居た頃は確かに面白そうだとは思った。某海賊映画パイレーツ・オブ・カリビアンは何度もDVDを見るくらい興味を惹かれたし、海賊の衣装は描き甲斐がある。
歴史上に存在したと言うアン・ボニーとメアリー・リードの女海賊にも憧れを抱き、一時期ハマっていたほどだ。

だが、現実と想像は違う。それを私は実を持って知っている。



「お前つまんねー奴だなぁ。冒険があるんだぞ?わくわくするじゃねーか!」

『―――私は、人を襲って直ぐ銃向けてくるような海賊が嫌いなの!』



例え、良い海賊がいようとも知るものか。

あんな事されて良い印象なんてある筈無い。例え悪行はしないと断定されても、信じられる保障など無かった。
大体、海賊みたいな賊になれば命がいくつあっても足りる筈が無いのだ。そういうスリルは二次元だけでいい。



「あーもー!俺達がここに入れるのは、後少ししかねーんだ!」

『あーはいはい。さっさと行ってしまえ』



そして、どこへでも行けばいい。

そう言おうとした時の事だった。



「―――ここに、麦わらの女と、麦わらのルフィがいるってのは・・・ほんとか?」



男が店のドアを破壊し、入ってきたのは。
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