少女よ翼を抱け

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ルフィのその強さは、凄まじいの一言に尽きる。

自分よりも何倍もある巨漢の男達をなぎ倒していく。
その標準的な青年の身体のどこにそんな力があるのかと疑いたくなるくらい、強くて、強くて。その細い腕は折れる事を知らない鉄の腕の様だ。
銃を向けられ撃たれれば、その青年らしい体躯の身体は撃たれる事なく逆に撃ち返していく。

―――まるでゴムのように。



『あれ何・・・?!』

「俺はゴムゴムの実を食べたゴム人間だ!」



ゴムゴムの実、ゴム人間。
聞き慣れない単語が聞こえてくる。これもこの世界特有と言う事なのだろうか。
私の思考が止まっている間に、ルフィは次々と男達を倒していく。



「くそっ・・・!おい、この女がどうなってもいいのか!」

『ぐえっ!』



すると、男は此方へと迫り私の首を腕で拘束する。
丁度男達を倒しドアの近くに居たルフィからすれば、カウンター側にいる私とこの男の反対側に位置する事となる。

ルフィは男を睨みつけ、男はニヤリと厭らしい笑みを浮かべる。



『―――つうっ』

「女が苦しそうだぞ?いいのか?そのまま続ければ・・・この女は死ぬ」



腕の力を強め、首を圧迫する力が段々と強くなる。
これでは窒息死しても、可笑しくない腕力だろう。このままでは息が出来なくなってしまう。



「お前、馬鹿だな」

「あぁ?」



不意に、ルフィがそう言った。
ルフィは絶えず男を睨みつけ、指を鳴らす。



「俺の仲間に手ェ出して、ただで済むと思うなよ!」



―――私を仲間って。

なった覚えはない。と言い掛けそうになるけれど、それを寸前で飲み込んでしまった自分がいた。
何故だろう。私は仲間じゃないのに。違う筈なのに。何故・・・?

瞬間、ルフィの腕が伸びて男の顔面を見事に殴っていた。



「大丈夫か?ななこ」



ニカッという効果音が付きそうなその笑みは、先程男達をのしていった青年とは到底思えなかった。





*     *     *





「一体、これは・・・」

「お、お前がななこの親父か?」

「ま、まあそんなところだが」



暫く経って、おじさんが帰ってきた。
私は急いで店の片づけをするものの、傷ついたのは絵だけではない。壁や床も、傷ついていた。
それに店先には倒れた男、船長も含め数名いる。おじさんが驚くのも無理無かった。



『―――おじさん、御免なさい!私が店番してたら海賊が来て・・・それで・・・』

「・・・君はつくづく、海賊に縁がある様だ」



どんな感情か分かりにくいその言葉に、私は肩をびくりとさせる。
やはり、2度も迷惑を被れば許される筈もなかったのだ。結局私はこのおじさんにとって疫病神でしかなかった。
人の好意を、この人の好意を受け取るべきではなかったのだ。
私は目尻に涙を浮かべ、ふるふると震える。



「なあおっさん、俺はこいつ、貰ってくぞ」

「え?」

「海賊に助けられたんだ。海賊がただで助ける訳ねーだろ?だから助けた代わりに、こいつ貰ってくぜ」



・・・何平然と恥ずかしい事を言っているんだこいつは。

硬直している私は、ルフィの放ったその言葉がずっと頭の中で回っていた。
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