少女よ翼を抱け
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「ひと?」
『いやあんな毛深い人っていないと思う』
「クマだぞあれ!」
「長っ!長いよ!クマが長え!」
―――ななこにとっては初めてやってきた、ライバード島は別の島。
そこに半ば無理やりで連れてこられた訳だが、進むにつれてここにはどうやらきけんがないことを悟る。
見渡す限りに広がるのは草原、草原、草原。時折に木。何もない島、と言えるだろう。
ただ、ここに住む動物達がやけに長いという事以外は。
「ななこ、落ち着いてきたなー」
『まあ、こんな所なら大丈夫じゃないかな・・・みたいな』
「コイツビビリだよなー。今度からビリィって呼ぼうぜ」
「よ、ビリィ」
『ルフィそのあだ名やめ!ウソップも悪乗りしない!』
悪戯っ子の様な笑みを浮かべる2人組に、溜め息をつくしかないななこ。
当初、この島に来てからは自分の身の安全を確認したのかウソップは早々に慣れてしまいすぐにルフィと共に行動するようになった。が、ななこはそうはいかなかった。何せこの世界にやって来て初めての未開の地。何があるか分からないとおじさんに教えられたこの海では、尚更身の危険が気が気ではなかった。
しかしそれが裏目に出てしまい、ななこの行動にも影響を与えていたのである。元々行動派ではないななこには、今の自分の海賊と言うスタンスでさえ内心では偉くおどおどとしているというのに。
もしかすると、それのせいで許容範囲を越え行動にも影響を来していたのかもしれない。元々あったものに更に加算した為、影響が出たのだろう。
『あー・・・もしかすると、チョッパーのお陰かもしれない』
「何でだ?」
『チョッパーをだっこしてると、癒される・・・』
ぎゅっと両腕の力を強め、チョッパーを抱きしめるななこ。
実はななこは、この島に来てからチョッパーに心配されて以降抱きしめていたりする。
性別女性、そして鼻も恥じらう高校生(であった)ななこにとって、こんな可愛らしい生物は癒し以外の何物でもない。まさにぬいぐるみ感覚でななこはチョッパーに癒されているのである。
「おいこれリンゴだぞ、長え!」
「食うな!」
「んめえ」
一方、ななこ達の先々を行くルフィとウソップはと言えば、この島の特徴ともいえる「長い生物」に興味津津の様子だ。
その証拠にとも言うのか、ルフィはこの島特融であろう無駄に長い林檎を手にして、ウソップ、ななこ、チョッパーに見せつけている。
「ん?おいあれ見ろ。民家じゃねえか?」
するとウソップは、普段から付けているゴーグルらしきものを目に当て、遠くを見てそう言った。
飾りではないのか、と不図口から零れた様に呟いたななこに失礼な、とウソップは返す。
しかし、こうして一応目的地は決まったと言う事で、ルフィ達ご一行がその民家へ向かおうとした。・・・時。
たたたた、ザッザッザッ、すたすたすた・・・。そんな効果音と共に、動物達は現れた。
「長い・・・どいつもこいつも・・・」
「何で長いんだ・・・!」
『私達、というか長居したらチョッパーがああなりそう』
「えぇ?!それは嫌だぞ!」
涙目になるチョッパーに、正直悪戯心を擽られたそうな。