単編
□甘日 W・D
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『ただいまー』
出先から戻ったミユが帰ってきた。
「お帰り◇」
エプロン姿のヒソカが迎え出る。
『どうしたのその格好?』
「格好?」
『エプロンなんてして…ん?なんかいい匂いがする』
クンクンと鼻を鳴らすミユ。
「ああ、料理を作っていたんだよ◆」
『料理?なんで?』
問い掛けながらリビングへと入る。
『わあぁ!何このご馳走!!』
目を輝かせるミユの目の前には、手の込んだ料理の数々がテーブルの上いっぱいに並べられている。
「今日はホワイトデーだからね◇」
『ホワイトデー・・・?あれ?今日って14日?』
「そうだよ◇忘れていたのかい?」
少し呆れ声のヒソカ。
『うん、すっかり忘れてた』
ははは。と苦笑いを浮かべる。
「しょうがないな◆もう少しで出来るからシャワーでも浴びてくれば?」
との提案を受けるとミユは素直に従いバスルームへと向かった。
暫くしてシャワーを浴び終えたミユがリビングへ戻ってくると、ヒソカは氷の入ったバケツからボトルを取り出すと栓を抜いた。
『ヒソカ・・・私、お酒は・・・』
「大丈夫だよ◇こう見えてアルコール度数少ないから◆」
とアルコール度数の書かれたラベルを見せた。
『2%?』
「うん◇これなら多少飲んでも大丈夫だろう?」
微笑みながらグラスへ注ぐ。
『ま、2%なら大丈夫か』
と席に付くとグラスを持った。
「HAPPY WHITEDAY◆乾杯◇」
『乾杯』
チンとグラスを合わせると一口飲んだ。
『んっ?これお酒?なんかジュースみたい!』
「アルコール2%なんてこんなものだよ◆」
『へぇー』
感心していると
「さ、食べて食べて◇ミユのために腕によりをかけて作ったんだから◆」
『うん、いただきまーす』
と言うのと同時にフォークで煮込みミートボールを刺すと口の中に入れた。
『美味しい〜やっぱりヒソカ料理上手だね』
笑顔を向ければ
「ありがと◇口に合ったみたいで良かった◆」
と微笑んだ。
豪華な食事も終わるとヒソカは一度キッチンへと向かい銀の蓋がしてあるお皿を手に戻ってきた。
「ジャンッ、ケーキも手作り◆」
銀の蓋を開けホールケーキを得意気に見せるヒソカ。
『すごーい!!これもヒソカが作ったの!?」
出来栄えの良さに目を輝かせる。
「もちろーん◇バレンタインの時はミユが頑張ってくれたからね◆」
『あの時の事は言わないで!』
酒を飲み過ぎて暴走してしまい朝起きるとシーツがチョコまみれになっていたという覚えていない記憶をミユは無かった事にしていた。
「それより食べよ◇ボクが食べさせてあげるね◆」
綺麗に切り分けたケーキを一口サイズにフォークで刺すとミユの口元へ持っていく。
「はい、あ〜ん」
『あ〜ん、美味しい!!』
「それは良かった◇もう一口食べるかい?」
と聞くとフォークを刺しミユの口元へ運ぶヒソカ。
『今度は私が食べさせてあげるよ』
とフォークに手を伸ばすが
「後ででいいよ◆」
と断られ、はいあ〜んと言われミユはなんの疑いもなく口をあけ美味しそうに頬張る。
1ピースを食べ終えると
『ごめんヒソカ、ちょっとトイレ』
とミユは席を立った。
トイレへと向かうミユの後ろ姿を見ながらヒソカはニヤァと妖しい笑みを浮かべた。
「準備は整ったようだね◇」
クククと笑い2%のシャンパンボトルのラベルをペリッと剥がした。
「2%のシャンパンなんてあるわけないじゃないか◆」
剥がされた下のラベルにはアルコール0%子供用シャンパンと書かれていた。