単編

□Treasure Send
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木の木陰に血まみれで横たわる女性の手には送信済みのメール画面が表示されている。

苦しそうに浅く呼吸をしながら既読がつくのを待つ。

ガサッと落ち葉を踏む音に勢いよく振り返ると幻影旅団の団長ことクロロが立っていた。

『ヘマしちゃった』

ミユはホッとしたように表情を緩めるとペロッと舌を出した。

クロロはミユの傍へしゃがむと出血の多い箇所を探る。

『団長早くメール開いて。早くしないと消えちゃう』

「しゃべるな」

クロロは少し眉間を寄せながミユを見下ろす。

壁一面の大きさの絵画をミユは携帯電話で写真に撮るとクロロ宛にメールを送信していた。

ミユの能力は写真を撮ったものが携帯電話へと保存されそれをメールで送れる能力だった。

送信された相手が受信したメールを開けばその場で具現化される。

撮ったものが大きければ大きいほどミユのオーラの消費も大きかった。

『団長…お願い早く開…いて。…消えちゃう』

ミユが死ぬと携帯電話が初期化されデータも全てなくなってしまう。

もちろん送信済みでも相手が開かなければ同じ事になる。

そんな事は知っているはずのクロロだがクロロは無言で止血を始めた。

『団長…!』

「もう一度だけ言う。しゃべるな」

ミユは驚いた表情を浮かべたあと困ったように眉尻を下げた。

的確な止血だなと感心しながらも目尻からは涙が一筋流れた。

「ミユ携帯を出せ」

ミユは内ポケットの在処を上着の上からポンポンと人差し指でゆっくり叩いた。

クロロはファスナーを下げると携帯を抜き取った。

「暗証番号は?」

『178966』

ロックが外れ画面には色々なアプリが羅列されているがクロロは設定を選ぶと躊躇うことなく初期化を押した。

『団長?』

「少し待て」

ミユはハーハーと上がる息を吐きながらクロロを見つめる。

クロロはミユの携帯電話の画面から一度も視線をずらすことはなかった。

見つめていた画面からようやく視線をミユへ移すとすぅーっとミユの体が軽くなった。

疑問符が頭に浮かんだがすぐに表情は厳しくなった。

『団長!!!』

「おお、元気が戻った。体は軽くても傷が治った訳ではないからな。帰ったらちゃんと手当てしろよ」

『どうして!!!……どうして……』

ミユは涙をボロボロと落としながらクロロに縋り付いた。

「お前の命の方が優先順位が高かっただけだ」

薄く笑みが浮かんでいるようなクロロをミユはボーッと見るしかなかった。


END

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