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□rob
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…寝てるのか?
控え室のドアを開けて一番最初に飛び込んできたのはロッカーと壁の隙間に寄りかかって目を閉じている忍足だった。
かく、と傾げられた首にカード一枚分程の隙間が開けられた唇。
長い脚は力無く無造作に伸ばされたまま、ドアを閉める音にも反応は無い。
珍しい事もあるものだ。
忍足と二人きり、他には誰も居ない部屋。
閉められたままの窓の向こうからは静かに試合の歓声が聞こえてくる。
コールドスプレーとタオルを取りに来ただけのつもりだったのだが、こんなにも近くで忍足の寝顔を見る事も無かったせいか、少し興味が湧いた。
バッグに向けていた足を忍足に向け直す。
ゆっくり。
ゆっくりと。
気配で起こしてしまわないように息を潜めて近付いて行く。
エアコンの効いた涼しい無機質な空間。
指を伸ばせば簡単に届く距離まで忍び寄り、膝に手を当て静かに屈んで俯き加減の顔を覗き込む。
普段前髪と眼鏡で隠された二重のくせに切れ長の涼しげな眼は睫毛の長さを強調するかのように伏せられたまま、漆黒の眸を晒す気配は無い。
…。
本当に寝ているのか?
あまりにも動かなすぎて、まさか死んでいるのでは、と嫌な憶測が頭を過る。
…忍足…?
自分の耳にも聞こえるか聞こえないか分からないぐらい小さく名前を囁く。
(…)
「……」
呼吸を確かめる。
それだけのつもり、
だった。
引力に引かれるように、
唇を奪う。
か細く鼻から息が抜ける気配。
鳥の羽が触れる程度の口付けを。
目蓋を全て閉じるのも忘れたまま、忍足の眠りを妨げるように。忍足が気付いて目を醒ましてしまわぬように。
「…」
自分より幾分か冷たい眠る唇。
薄い薄い皮膚越しに感じる忍足は羽毛程に柔らかかった。
「…」
吸い寄せられるようにもう一度、