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□雨とビスケット
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くだらない。

そう切り捨ててしまえばこんなに簡単な事は無い。

なんだ。
考えるだけ無駄だったのか。

「忍足」

「?」

忍足が口に運んでいたマグカップをひょいと取り上げる。
半分程中身の残ったそれはまだ熱を保ったまま、振動で揺れる度ふわりと菩提樹の芳香を漂わせる。

「なんやねん…まだ残っとるんやけど…」

「悪いね」

すまないなんて微塵も思っていないけれど。

「幸村…?」

キミがこんなに近くに居るのに何もしないなんて、なんて勿体無い。

「我慢しない事にしたよ」

時間には限りがある。
自我を殺して、いい子ぶって。それで?

「セックスしよう。忍足。キミがキミを分からなくなるくらい気持ち良くしてあげる」

こんなにくだらない事はない。

脳が恋愛感情を認識する原理はただの錯覚であるとする。この相手の遺伝子を残したいと無条件で働く勘のようなもの。
互いに似かよらない遺伝子同士の子供である場合の生存率の一般論。

「忍足」

抵抗らしい抵抗も出来ない?それともしないだけ?

種の保存の為だけに組まれた二種類の性別上にしか存在しない道徳理念ならばそれが通用しないこの世の中は一体何?

「ねぇ?忍足、返事は…?」

「…っ自分、どうせ俺の返事なんか聞く気ィ、なぃくせに…ッ」

「御名答」

世界で一番始めに同性で欲が満たせるって気が付いたのって、誰なんだろうね。




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