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□謙也さんの従兄弟
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「ははっ君、なかなかの腕前やん」
侑士さんは、俺と目が合うと眼鏡の下の涼しげな目を細めて楽しそうに笑った。
「へぇ〜…顔整ってる人って笑うとイメージ崩れるもんやと思ってましたけど、侑士さんて、そんなことあらへんのですね」
「何?ちょい棘ない?ぇっ…と、」
「財前です。財前光」
俺の名前を聞こうとしたんやろう。所在無さげに謙也さんの顔を伺おうとした侑士さんの言葉を遮って付け足す。
「財前、くん…ね」
「あー、君とかええですわ。財前でも光でも好きな方で呼んだって下さい」
この、侑士さんのちょっとびっくりした顔もまた…
「え、…あ、そ…?…なら、財前…」
「なんですか?」
「待て待て待て待てちょい待てやオイ」
「なんですの…」
チッ
邪魔モンが。
割って入って来おってからに。
「いやいやいやいや!財前くん?今舌打ちしましたやろ!ちゃんと聞こえとるんやで!」
あー…もーこの犬どっか行かへんかな、俺今侑士さんと話してんねん。
どこ行ったねんうちのエロ部長…
東京。
氷帝の敷地内のどこかに居るであろう、誰でもいい。
とにかく誰か早くコイツを目の届かないところへ連れてってくれ。
俺は侑士さんと話がしたい。
どーでもええからテキトーにあしらってなんとか退場願おうと思考を巡らせていると
「情けないやっちゃなぁ謙也…自分完全に負けとるで?」
クスクスと侑士さんが笑う。
「ほな…せやな、財前。甘いの好きか?」
「食いますよ」
「何!!??侑士!!!それ俺にくれるんちゃうかったんか!!!」
侑士さんの手には茶色い紙袋。
なんや今日は調理実習があったとかでお菓子を作ったと出会い頭に言っていた。