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□謙也さんの従兄弟
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何でもみんな…と言っても男連中が真面目に実習なんぞするわけもなく、何人か分侑士さんが纏めて作ってあげた結果、戦利品として山盛りのお菓子を手に入れたらしい。

半一人暮らしの身では食べきれないと暫し固まったそうだが、運良く練習試合があると思い出し、こうして従兄弟殿にお菓子の差し入れをしに来てくれたところに俺も居たのが今日の発端。

「アホ。これはもう財前のもんや。なぁ、財前。何時もコイツのお守り堪忍な?」

ああぁああ!!!ゆぅしぃいいいい!!!

とか大絶叫している犬(忍足謙也・♂)を軽くスルーして俺は侑士さんの白い指が作ったお菓子をゲットした。

「そんな、お礼とかええですわ、気にせんといて下さい。あ、ありがたくいただきます」

紙袋を受け取って暫しの優越感に浸る。

「これ、開けてもええですか?何作りはったんです?」

「ん?抹茶と小豆のフィナンシェ。ちっさいパウンドケーキみたいなもんや。せや、財前、小豆大丈夫なんか?」

ああぁああ!!!!!!あかんあかんあかんゆぅしぃいいいい!!!!!!

まだ何か叫んでいる犬(忍足謙也・♂)を視界から完全にシャットアウトする。

「マジすか!俺大好きっす」

紙袋の中から現れた焼き立ての、フィナンシェ。

まるで売り物みたいに焼きも完璧、形も綺麗。それにこの上等な匂いだ。これが美味くないわけがない。

「そか、そら良かった。仰山あるから試合終わったら後で四天のみんなで食べてや?」

「や、俺一人で食いますそんなみんなでとか勿体無い」

侑士さんの言葉に一瞬で辺りに花の咲いた謙也さんをバッサリ一刀両断する。

「え?かなりの量やで?…無理せんで…」

「侑士さんの作ったケーキですやん。誰にもやりとうないです、俺」

告白じみた俺の発言に、頬を人差し指で掻きながらちょっぴり照れたように笑う侑士さんの後ろで、その従兄弟殿が白骨化して死んでいた。
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