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□邪魔な眼鏡や
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世の中には必要ないものが2つだけある。


1つ目が、無駄なもの。



そして2つ目が、



邪魔なもの。



シャワールームでばったり会ったのがこの黒毛、うちの謙也のイトコくん。
気だるそうに濡れた髪を掻き上げ、首から下げたタオルで眼鏡を拭いていた。

「ん、あぁ、白石やん。そっちも練習終わったんか?」

俺に気が付くと僅かに首を傾げながらゆるりと眼鏡をかけ直す。

「ああ。全員上がったで。侑士もしんがりか?」

「しんがりて…、なんやエライ責任重大やなそれ」

苦笑い。

まぁ、コイツの場合は単純に混雑を避けてたらこの時間、ってのが正しいんやろうけれど。

「…って事は侑士が今上がったんやから今日は俺がラストかいな」

「ま、そういう事やな」

「しゃーないな…」

「なんやねんそのため息は」

別にラストだから何かあるわけではないのだが、なんとなーく出たため息なのだからしょうがない。

「そういや、ウリエルだかミカエルだかいうかぶとむ「カ!ブ!リ!エ!ル!!!」

全文言わずもがな、何を言いたいのか分かってしまう辺りが我ながら窮地。

きっと今ものごっつ殺気溢れる顔しとるに違いない。
今一瞬侑士が怯んだ。

「あ、あはは、まだ生きとるんか会えなくて寂しいやろ」

「…止めてくれ…俺の硝子のハートが砕けそうや…」

「そらぁ堪忍」

今頃エアコンの効いた部屋で霧吹きもしてもらえず苦しんでいるのかもしれないと思えば…って

「じゃあ2代目はウリエルなん?」

「は?」

「やって、ガブリエルなんやろ?ほな、次はミカエル、ラファエル、ウリエ「待て待て待て待て」

のす、のす、と侑士に近付き両腕を伸ばす。

かしゃん、と金属質の音がして侑士の背中がロッカーに当たった。




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