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□電話越しに震えた声
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ここ一週間電話がない。
「なんや謙也何イライラしとんのや顔怖いで」
「謙也さん極道みたいっすわー」
散々な罵詈雑言を浴びせかけられながらもいちいち睨み返すなと言われたくないので目は合わせない。
侑士がテスト期間なのだらしい。
頭の良さは御墨付きなのだから今更真面目に勉強なんざせんと誰も困らんだろうにあの堅物は。
メールはしてる。
電話してへん分無駄にガンガン送りつけとるしちゃんと返信も来る。
でも
『侑士の声はα波』
を素で体感してしまったこの耳には、あの甘ったるい少し掠れた声が聞かれへんなんて非常事態以外のなんでもない。
結論。
俺は一週間でダメな男。
確か今日でテストは終わりだった筈。
この溜まりに溜まったマイナスのオーラを侑士でデトックスする気満々で電話しても大丈夫かとメールを送る。
が。
待てども待てども返事が無い。
まさかの放置プレイに胃が痛い。(気がする)
何かあったんやろか。
あいつがこんなに俺を待たせるなんて。
俺が短気で待てがきかない性分なのを誰よりも知ってる筈の侑士が。
…イライラ、する。
送信したのが部活終わった時。
家帰って風呂って飯食って、ベッドの上で1人ケータイを握りながら大の字になって天井を睨む。
まだか。
まだなのか?
今何時だ?
ケータイの時計を分単位、秒単位で目で追う始末に怒りが頂点に差し掛かった時だった。
「侑士かッ!!」
着信を告げたケータイに、画面を確認もせずガッと食い付いた。