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□譲れへん
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「ヒュ〜!ナイスや謙也!」

「せやろせやろ!」

放課後。
チャリンコこいで駅まで白石と猛烈ダッシュ。


侑士が帰ってくるで


究極魔法を高らかに唱えた瞬間俺は無敵芸人となる。

連休だから、と里帰り(嫁さんにくれてやったつもりはない)しに来た侑士を出迎えに坂道を二人でかっ飛ばす。

「実家まで送ってやるから練習に参加していけ」

とかエライ迷惑な事ぬかす部長を宥めるのに半日費やしたとかで(なんつー迷惑なやっちゃ!)予定が半日押しっちゅー話やけど、それでも侑士が帰ってくるのに変わりはない。

オサムちゃんに頼みに頼み込んで部活無しにしてもらった勢いそのまま駅の駐輪場にドリフト決めて滑り込む。

「ちょー!!待てや謙也!」

「来るん遅いわ!」

後ろからひーこら言いながらついてくる白石は完全無視!

早いモン勝ちの先着順やで!世の中常にスピードがものを言うねん!

山羊の群れみたいに好き勝手まばらに歩いてくる人垣を全力疾走で駆け抜けて行く。

どんなに人が居たって見間違う筈ない。
勘の通り、ほら、もうすぐそこ。

狭い通路を直角に曲がって、目の前に広がる改札口の一番…端!!

「侑士!!!」

行き交う沢山の視線が俺に注がれる。

丁度出てきた切符を引き抜いていた侑士が驚いた顔をして俺を見た。

「侑士ー!!!」

侑士の膝を邪魔する小さなゲートが開いたのを確かめるつもりもなく思い切りよく侑士に飛び付いた。

「けっ、謙也!?」

「ほんま待っとったで!待ちきれんから迎えに来たわ!!」

侑士を抱き締めたままくるくると侑士を荷物ごと振り回す。

「け、けけけんやッ!やめ!ドアホ!!」

あたふたと慌てふためく侑士を笑いながら下ろしもう一度ぎゅう、と抱き付いた。

「お帰り!!」

抱き付いた勢いそのままガバッと離れ、侑士の荷物を代わりに担ぐ。

有無を言わさず腕を掴んで今さっき駆け抜けて来た通路を歩き出す。

「ちょ…!謙也っ!早い!早いねんて!」

「時間勿体無いやろ!せや!白石も来てんねんで!多分その辺におるんちゃうかな」

クスクスと笑い声が聞こえる中、焦りと恥ずかしさで耳まで真っ赤になっている侑士を引き摺るようにして駅の構内を歩いて行く。

「にしたって遅いなぁ白石、確か一緒に来た筈なんやけどなぁ…」

「…な…何が一緒にや…こんにゃろが…」



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