小説

□19章
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 「っ…お財布見付からないよぉ…どうしたらいいの……っ」

行く当ても無く一人途方に暮れながら街を歩いていると一人の男がユエルを見るなり、まるで何かを見付けたかのように言った。

「あっ、おまえは…! さっきの!」

「…!?」

ユエルの心臓がドクンと跳ね上がった。もしやレツの追っ手に見付かったのだろうか。もしも連れ戻されたらどんな仕打ちを受けるのだろう…。それを考えると全身が凍り付くような思いだった。

「おい、ガキ。ちょっとそこまで付き合えや…」

「っ…!!」

男は強引にユエルの腕を掴んで路地裏に連れて行こうとした。

「やっ…! 放してくださいっ…!!」

「…暴れんな…ちぃっとばかし話を聞くだけだからよ…
あんまし暴れるようなら……?」

そう言って男はナイフをちらつかせた。

「ひっ…!」

ナイフで脅され逆らえる筈も無く、人気の無い路地裏へ連れて行かれた。


 
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