小説

□29章
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 その後二人は気まずさから言葉を交わすこともないまま部屋へ戻った。

ノエルは客の要望だったとは言え、自らが行なった行為に対して背徳感を感じていた。

「ユエル…ごめん…」

ノエルはベッドに体育座りをしているユエルに思い切って声をかけた。

「…ううん、恥ずかしかったけど…お仕事だったんだもん…仕方無いよ…」

「本当にごめん…」

「謝らないで。ユエルは大丈夫だから」

ユエルは微笑みながら言った。しかしノエルにはその微笑みが強がっているように思えた。
また少しの間、沈黙になってしまったが、ノエルは以前から気になっていたある疑問をユエルにぶつけた。

「ねぇ…前から気になっていたんだけど……
ロイド…って誰…?」

「…!」

ロイドの名前が出た途端にユエルの身体は分かりやすく反応した。

「別に…話したくないなら良いよ…?
ただユエルが以前から何回か言ってた名前だから…
寝言でもたまに言ってるし…誰なんだろうって…ちょっと気になってただけ…」


 
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