小説
□36章
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「旦那様のここ…もっと欲しいですっ…んんっ…あっあぅ…! もっと…奥までくださっ…!」
紅美香登に戻ったノエルは、いつも通り客の相手をしていた。
「今日はすっごく良かったです…旦那様と僕って身体の相性良いのかもしれないですね。
あの、旦那様…また僕を指名してくださいますか…?」
「もちろんさ。また来るよ!」
客は満足して帰って行った。ノエルは、客を見届けると、深い溜め息を吐いた。
「はぁー……」
「どうしたんだよノエル」
背後から頭をぽふぽふされたので、振り返ると其処にはグレンが居た。
「…グレン…」
「ユエルが居なくなって寂しいのか?」
「…いや…そうじゃない……何だか嫌な予感がするんだ…ずっと…嫌な予感が頭から放れなくて……杞憂に終われば良いんだけど…」
「嫌な予感…?」
「…ねぇ、グレンはユエルをちゃんと送り届けたって…そう言ったよね…?」
「ああ。ちゃんと屋敷まで送り届けたぜ」
「…で、ユエルはロイドさんに会えたの? 屋敷の中にロイドさんは…間違いなく居た…?」
「んー…そこまでは見てないぜ。
俺は屋敷の前まで送り届けて帰ったんだ」
「…何で……! 何でそこで帰ったの…!?」
ノエルはグレンに責めるように強い口調で言った。
「いや、だってよ…平和そうな静かな田舎だったし、ロイドって奴は俺たちよりも先に帰ってる筈だろ?
だったら別に危険は無いだろ。それに感動の再会を邪魔するのは野暮さ」
グレンにはノエルの感じている"嫌な予感"が全く伝わっていなかった。