shortstory

□まだ花の無い君
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外からは運動部の掛け声やらが聞こえ、この静寂した空間によく響く。




そこに相応しくない、盤を打つ音が。











パチンッ













「……」


「ふふ、どうした?詰みか?」

「いや。そんな事はない…!」





やるとなれば負けたくはない。



次の手が見え、よし。と駒を打つと、赤司がいつまで経っても動かない事に気付く。





盤を見ていた目を赤司に移す。








生憎赤司は窓の外をボーット眺めていた。





「…赤司!」





「ん、ああ。すまない」







ハッと我に返って赤司がこちらを向く。







思えば今日、赤司の様子はおかしかったのかもしれん。


放課後、一人で将棋を打つ事は時々あった。
しかしそれでもあんな時間まで打つ事はなかった。





そして勝負中、他の事に意識を逸らすなど以ての外。ハズなのに…








「ミーティングと言い今の事と言い…何かあったのか?」








そう訊ねると、赤司は微笑んで再び窓の外に視線を移した。


俺もそちらを見ようとした時赤司の口が動き、止める。






「少し、考え事をね」













何とも言えない赤司の表情。



俺が返答に困っていると、赤司が席を立った。








「…部活に行こうか、緑間。付き合わせて済まなかったな」

「!?まだ途中なのだよ!」




「ああ、今日は部活を休むと伝えてくれないか。少し…疲れてしまってね」
「赤司!!」






「なぁ緑間」











俺の言葉を総て無視し、赤司が背を見せながら呟くように紡いだ。
























「お前には桜が似合うな」
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