shortstory
□記憶の中の隅っこの僕
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赤司くんが倒れ、数ヶ月。
ようやく目を醒ました彼は、記憶を失っていました。
だけど、覚えてる事も幾つかあった。
赤司征十郎という存在
バスケや将棋の事
そして、大切な人の事。
「敦」
僕ではない、人の事。
僕は、彼の記憶の端に詰められていただけだったのだと、
改めて痛感しました。
それでも、それでも、と。
いずれ自分を思い出してくれるのではと。
みんなの事、あの日の他愛ない話の事。
思い出してくれるのでは、と・・・
けれど彼は一向に僕を、思い出す事は無かった。
そしてある日、赤司くんの大切な人から言われた言葉。
「もう来ないでほしい」
きっと以前の僕であれば、納得が行かずに反論したのでしょう。
でも、僕もどこかでわかってしまっていた。
もう僕が彼の記憶に蘇る事はないのだと。
もう傷付く必要なんてない。
彼の中の僕は既に死んでしまっていた。
今更取り戻すも何も無い。
でも、願わずにはいられないのです。
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