shortstory
□「彼の定義はなんだろうか。」
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三年の引退間近、部活に出るのを止めた。
部活を辞めた訳ではないし、
部活が嫌になった訳でもない。
ステージの上に座って、そこからボールを
バンッ
と床に打ち付ける。
ただ、無心に。
「赤司!!!」
突然耳に入った自分を呼ぶ声に思わず手が止まる。
叩きつけられる事が無くなったボールは、壁に当たって遠くへ転がっていった。
「緑間・・・・・・」
「部活にも最近出ないで、こんな所で何をしているのだよ」
体育館の入り口に野球のボールを手に持って立っている緑間。
先ほどから何度か名前を呼んでいたらしい。
「少し考え事を」
「何だそれは…」
ボールを拾い上げ、そのまま綺麗なフォームで、静かに投げ上げる。
そのボールは弧を描いてゴールに入る。
(相変わらず、見惚れる程綺麗だ)
「悩み事なら話してみろ」
不器用な彼が眼鏡を押し上げて言う。
「……そうだな。
なら、聞いてもらおうかな」