shortstory
□仮面少年の本当
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朝練前、朝練後、昼休み。
それから部活前。
女子から呼び出される事はしょっちゅうあったから、別に部活のメンバーも気にしていなかった。
そして今日は部活前。
「あの、私・・・っ」
正直、面倒くさい。
俺にはちゃんと心に決めた人がいるし、
確かに少し普通ではないけれどお互いに愛し合って付き合ってもいる。
「俺、他にいるから」
勝手な好意の押し付けは勘弁だ。
「ま、待って!」
とっととその場から消え去りたい一心で、後ろを向くと
呼び出した女が俺を呼び止めた。
「・・・何?」
ああ、早く終わらせて彼に会いたい。
朝練は仕事で出られなかったから。
「一度だけ、一度だけでいいの。
あの、・・・抱き締めて、ほしい・・・」
か細い声で告げられ、俺は盛大に溜め息を吐く。
そんなに“モデルの俺”と近付いたっていう事実が欲しいのか。
哀れな女。
「いーよ」
そこに心なんてない。