びっぽ短編

□図書館の先輩
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授業とHRが終わり、私はいつものように急いで図書館へ向かった。


息を切らしながらドアの前に着き、呼吸を落ち着かせてからドアを開けると


私「・・・あ」


机に突っ伏して寝ている先輩の背中が見えた。


やった、また会えた


私は起こさないようにそーっと先輩の2個隣の椅子に座った。


私「やっぱり、かっこいいなぁ・・・」



寝顔を眺めながら、
ずっとこのまま時が止まればいいのにと思った。


放課後に図書館へ通い始めてもう3週間くらい。
少し前までは図書館に居るのは私1人だったけど、
突然先輩が図書館に通うようになった。


先輩の名前は、チョン・ジニョン。
友達の先輩に教えてもらった。


最初は先輩のことを何とも思っていなかったけど、

私が背伸びして棚の上にある本を取ろうとしたとき、
ひょいと手に取り「はい」と手渡してくれた時から、先輩が気になるようになった。

そのときの笑顔が凄く眩しくて、かっこよくて・・・


でも、先輩は私のこと
いつも図書館に居る後輩としか思ってないんだろうな・・・


本当、ずっとこのまま一緒に居られたらいいのに・・・


そんなことを思っていると、私の気持ちに反抗するように
突然戸締りの予鈴が流れた。


私「・・・あ」


すぐに帰らないと
私が職員室に鍵を取りに行き
図書館の鍵を閉め、また職員室に行くことに・・・


めんどくさいし、それより・・・


そんなことになったら絶対先輩と話すことになっちゃう!


こういう状況をピンチと思わず
チャンスと思える人、本当尊敬する・・・



私「・・・ん?」



あれ?
ていうか、私先輩を起こさなきゃいけないんじゃない!?


無理無理無理とテンパっていると、閉鎖時間まであと5分前になっていた。


私は覚悟を決めて、
ドキドキしながらそーっと先輩に近づいて
「せんぱーい・・・」と呼び掛けた。


でも先輩は全く反応せず
規則的な呼吸を続けてるだけ。


どうしようと思いながらも、私は先輩の寝顔に釘付けになっていた。



真っ白な綺麗な肌にキレ長の目・・・




どれほど経ったか分からないくらい先輩に見惚れていると、
先輩が突然パチリと目を開けた。


私「・・・っ!」



じにょん「ん・・・?」


私は急いで先輩から離れ
「ごめんなさい!」と叫んだ。


先輩は目を擦りながら、ぼーっとしたまま私を見つめた。

じにょん「・・・あんな顔近づけるなんて、何かしようとしてた?」


ニヤリと笑う先輩が、少し色っぽく見えて、
しかもあんな台詞を言うから
私は顔を真っ赤にして首を振った。


私「違うんです!本当・・・あの、ごめんなさい・・・」



じにょん「え・・・冗談だよ、謝らないで」



先輩は少し困ったように笑って自分の荷物を鞄に詰め始めた。


あぁ・・・おどおどしてる奴って思われただろうな



私も帰る支度を始めると、支度を終えた先輩が私の方へ向かってきた。


じにょん「綾・・・だよね?名前」


私「え、はい・・・」


どうして私の名前・・・


じにょん「前ドアで友達が名前呼んでるの聞いたんだ」


私「あ、そうだったんですか・・・」


そうだよね、たまたま聞いたから知ってるんだよね・・・


じにょん「あ、でさ、良かったら・・・」


私「・・・?」


先輩が少し躊躇ってから
続きの言葉を言おうと口を開いた時

閉鎖のチャイムが鳴った。


先輩ははぁーっと溜め息をつき、スピーカーを眺め・・・いや、睨んだ?


私「あ、あの・・・」


じにょん「あぁ、ごめん。
・・・何でもない」


私「あ・・・はい」


何でもないか・・・一瞬、誘ってくれたのかと期待しちゃった。



まだ帰りたくない、一緒に居たい


そう思っていると、
先輩が私の心を読んだように

じにょん「・・・あそこの机、一緒に片づけない?

もうチャイム鳴っちゃったし」


と向かいにある机を指差した。


私は笑顔で答えそうになったのを堪えてはいと答えた。


本を本棚にしまっていると、
先輩が「あ」と言って一冊の本をまじまじと眺めているのに気づいた。


私「あ、これ・・・」



じにょん「あ、知ってる?」


私「はい・・・この本好きなんです」

じにょん「本当?俺も好き。いい話だよね」


先輩は私を見つめて話してくれるけど、
私は恥ずかしくて先輩の顔をあまり見れなかった。


しかも、俺も好きって・・・


特別な意味で言った訳じゃないのは分かってるけど・・・


私「で、でも、先輩もこういう恋愛の本読むんですね」


じにょん「え、どうして?」


私「・・・いつも考え事をするような格好して読んでたから・・・」


私はそう答えたあと、はっと自分の口に手を当てた。


じにょん「そんなに俺のこと見てくれてたの?」


私「あ、いえ、その・・・視界に入って・・・!」


はぁもう、何言ってるんだろう私・・・!


慌てて手を振る私を見て先輩は優しく笑ってくれたけど、
私は上手く話せない自分に嫌気がさした。


どうして、もっと上手く話せないんだろう・・・


もっと話したいけど、話したらどんどん口下手なことを知られてしまいそうで、
私は口を閉じて本をしまい始めた。



暫くした後
自分の分をしまい終えた先輩が
手伝おうと私の持つ本を取ろうとしたけど、

私は大丈夫ですと言って断ってしまった。


せっかく先輩がこんな近くいるのに・・・


どうしてもっと接近できないんだろう

涙が流れそうになり、私は俯いた。



そんな私を見て、先輩は少し躊躇った後私を見て口を開いた。


じにょん「・・・さっきの本、結末覚えてる?」



私「・・・はい」



じにょん「主人公とヒロインは両思いなのに
お互いの気持ちに気づかないまま時を過ごし、歳を取って、主人公が病気になった時に二人は再会し結ばれ・・・一緒に病気と闘う、だったよね?」



私がはいと答えた。
こんなに上手く説明できるなんて、先輩も本当に好きな本なんだな。


じにょん「・・・思いを伝えられないまま歳をとる、か・・・」


そう呟く先輩の横顔は、なんとなく悲しそうに見えた。


じにょん「その気持ち、分かるな」


私「え?」


じにょん「好きな人に気持ちを伝えられない主人公の気持ち」



・・・好きな人・・・


私「そう、ですか・・・」



そりゃそうだ、こんなかっこいい先輩なら、好きな人がいてもおかしくない・・・



じにょん「全然気づいてくれないけどね」



先輩は笑いながら話すけど、私は作り笑いしかできなかった。




じにょん「・・・こんな近くにいるのに」


・・・え?

聞き返そうとした時、先輩が突然私に歩み寄ってきた。


私「あ、あの、せんぱ・・・」



私が後退りをしても、先輩はどんどん私に近づいてくる。


とうとう後ろの本棚に背中がついた時、先輩が本棚に手を当てて私の行く手を阻んだ。


じにょん「・・・まだ気づいてくれないの?」


私「え・・・」


じにょん「ずっと、綾のこと見てたよ

本を借りようと図書館に来て、綾に会ってから。

図書館に通い始めたのは、綾に会うためだったんだ」


え・・・

先輩も、私のこと・・・

私は手に力を混め、緊張しながら口を開いた。


私「わ、私も・・・先輩と会うために図書館に通ってました」


じにょん「え・・・?」



私「先輩を見ていたくて、振り向いてほしくて・・・



私、私も、
ずっと先輩のこと・・・ん」



俯いていた顔を上げて口を開いた途端、
じにょんが私の唇をふさいだ。


触れるだけのキスをすると、先輩は優しく微笑んだ。


じにょん「・・・先に言われるとこだった。



・・・好きだよ、綾」



私が涙を浮かべて微笑むと、
先輩は私に優しくキスをした。




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帰り道


じにょん「綾も俺のこと見ててくれたなんて、全然知らなかった」


私「先輩も全然気づいてくれませんでしたよね」


じにょん「でも、寝顔を撮られたのは気づいたよ」


私「え!嘘!」


じにょん「ま、俺も撮ったからお互い様だけど」


私「」






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