短編

□どっちだ?
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「沖絵!」


『は、はい!?』


「「私はどっちだ!?」」


『こっちです』




 私は右を指した。
何故ならば、左にいる不破先輩が苦笑して、右にいる鉢屋先輩は勝ち誇った笑みをしてるからだ。
表情からして、もうバレバレだ。





「何故分かったのだ!?」


「三郎(苦笑」


『それは、左にいる不破先輩が、
いつもつき合わせちゃってこめんねという、オーラが出てました』


「ら、雷蔵!」


「いや、だって本当のことだし。
ごめんね、李里ちゃん」


『いえ。不破先輩は悪くないです』


「何、その、雷蔵は悪くない。
悪いのは私だ、みたいな言い方は」


『本当のことでしょう?』


「チッ)・・・」




 うわぁ・・・、この先輩、舌打ちしたよ。
後輩に負けたからって舌打ちしてるよ。


 あ、この勝負、いつも賭け事してるんだった。




『甘味、お願いします』


「分かってるさ。雷蔵、私は先に行くぞ。」


「うん。」




 鉢屋先輩は、「次こそ私が勝つからな」と、台詞を吐いて、
不破先輩を置いて去っていった。
そんな鉢屋先輩を見て、不破先輩は苦笑してる。

 さっきから、不破先輩、苦笑しかしてないような気がする・・・




『不破先輩、どうしたんですか?』


「んーん、何でもないよ。
ただ、李里ちゃんに言いたいことがあっただけだよ。」


『言いたいこと?』


「うん。
いつも、三郎につきあってくれてありがとう。
これからも、あることだけど三郎に愛想付かないでほしいんだ。」




 不破先輩は、困ったように言う。

 やだな、先輩。
私が愛想つくとでも?




『そんなの、あり得ない話ですよ』


「そっか。ありがとう」



 不破先輩だけに、ふわっと笑う。
あら、私、上手くね??


 不破先輩は、私の耳元で「じゃ、私は雷蔵のところへ行かないといけないから、またな」
と、不破先輩らしくない口調と一人称で言う。


 え、この一人称と口調って・・・まさかっ!?




「甘味、おごってくれるんだよな(ニタリ」


『な、鉢屋先輩!?』


「今回は、少しばかり雷蔵に私のフリをして貰って、
私は雷蔵のフリをして、沖絵に勝負を挑んだんだ。」


『卑怯ですよ!』


「騙されるお前が悪い。
なんせ、忍者は卑怯だからな」


『うっ』


「まぁ、面白いものが見れたし、良しとしようか」




 フっと、勝ち誇った笑みで鉢屋先輩は私を見る。
悔しい。会ってから今まで騙されたってことが!

 私は、そんな悔しくて鉢屋先輩を睨んだ。






END





(それにしても、今回の雷蔵は、珍しくノリノリだったな。何故だと思う?)
(知りません!)(・・・そんなに睨んでも結果は変わらないと思うが)(それは分かってますよ!!)

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