短編
□「けま」
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『失礼します』
用具庫に入ると、思った通りだったようで1年生がいたが、くのいちを見ても怯えないで、なにか用ですか?と私に聞く。
『あーっと、その・・・』
「ん?くのいちか。
どうした?」
『ぅぁっ・・・!』
あの人・・・今、棚の後ろから出てきた人って・・・
最上級生であり、指三本に入る武闘派の・・・
『しょくまん先輩?』
「・・・」
「「ぶふぅ!!」」
「あ、しんべヱ、喜三太、お茶を吹き出すな!」
「食満(けま)先輩の名前・・・」
「たまにあることだから、気にするな(苦笑」
え、“しょくまん”じゃなくて、“けま”なの!?
やばいことをしてしまった!
苦笑してるけど、腹の中で怒ってるよ!
「そんなに、あわあわするなよ。
ここ、用具庫だから、怪我するぞ?」
『あ、その、名前間違えてしまってご、ごめんなさい!』
「だから、いいって。
たまに間違えられることだからさ」
『お、怒ってませんか??』
「あぁ。」
フっと、食満先輩は笑いながら、
私の頭をポンポンと優しく叩く。
その食満先輩の手つきがどことなく優しく感じる。
なんか、恥ずかしくなってきた・・・
ボンッ
『〜っ//』
「ど、どうした??」
『な、何でもないですけど、そのっ、手を//』
「あ、すまない・・・//」
「ヒソッ)しんべヱ、なんか二人の世界に入ってなぁい?」
「ヒソッ)あ、喜三太も、そう思った?僕もそう思ったよー」
私たちの様子をお茶を飲みながら、1年生2人が見てるのは知ってるけど、そんな話をしてるなんて私は知らなかった。
・・・あ、
『あの、手鋤ありますか?』
「そうだった。
借りるために用具庫に来たんだったな。」
『はい。』
「じゃあ、名前を書いてくれ。
オレはその間に、取りに行ってくるから」
「こっちで書いてくださーい」
「座って書いた方が字もズレなくていいですよー?」
『は、はいっ』
私は1年生2人がいる前に座り、貸し出し表に名前と学年を書くと・・・
「沖絵 李里先輩ですねー」
『?』
「沖絵先輩は、先輩ですから、敬語使わなくていいですよー」
「お菓子食べませんー?」
『あ、えっと・・・た、ただ、手鋤を借りに来ただけだから、気持ちだけ受け取っとくね?
それと、敬語使わないように気を付けるね』
そう言うと、2人は、はいっ!と、大きく返事をし、
しんべヱくんは、なら、また今度一緒に食べましょーねと約束したり、
喜三太くんには、今度、僕のなめくじさんたちの芸をみてくださいと約束をしながら、
手鋤を取りに行った食満先輩を待つことにした。