−1年生編−
□第14話〈ポラリスの惰眠〉
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灰色の世界は色を亡くす、
たった一つ君という色さえも
第14話
〈ポラリスの惰眠〉
「…っ!」
深夜、マリは冷たい石畳の上で目を覚ました。
先ほどまで見ていた悪夢に息切れすれば、冷や汗が頬を伝い、床にポトリと落ちた。
休暇に帰ってきてから毎晩恒例となった『お仕置き』のせいで、マリの体は限界に達していた。
暗闇の中クルーシオをかけられ、ブラック家の家訓を唱えさせられ、闇の帝王へ敬いを強いられ……
精神が崩壊するほどに長い時間拷問を受けていた訳ではないが、狭く暗い場所にたった一人で閉じこめられることは、マリに多大なるダメージを与えた。
「っはぁ…っ」
真っ暗な塔の中で、マリはおぼつかない足取りで立ち上がった。
壁に手をつき、一番近くにあった窓にすがった。
「…くっ…」
窓の縁にすがりついていないと、足が震えて立っていられなかった。
マリは窓から顔を出し、夜空を見上げた。
満天の星空が瞳いっぱいに広がった。
「あ……」
青白い光を放つ星、スピカが目に入った。
とっさにスピカの近くにあるはずのアルクトゥルス星を探すが、その星の姿はマリに見つけることはできなかった。
「レギュラス…」
今頃みんな、どうしているんだろう。
早く、早くみんなにあいたいなあ。
あえるのよね?あえないかなあ。
でもわたしは、もうグリフィンドールにはいられないのね。
スリザリンになるから。
だけどそれは光栄な…、そうコウエイなこと。
悲しんじゃいけない。
哀しんじゃいけない。
そう、闇の帝王はぜったいてきで、せいぎで、そんけいすべきソンザイで…
あれ、私があいたいのは、
レギュラス、シリウス、ジェームズ、リーマス、アミー、メイリン、リアディ…
おとうさまが言ってた、この中にまちがってる人がいる。
だれだったかしら。
シリウス?アミー?それともメイリン?
いけない。まちがいが分からないとまた痛いことをされる。
一体誰がまちがっていて、だれがただしいの……?
「へん、なの」
みんなだいすきなのに、ね。
マリの小さな呟きは夜風にかきけされ、消えていった。