−1年生編−

□第1話〈泥沼の中のスターチス〉
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果てなき命の讃歌

悲しみの旅の果て

用済みとされた玩具箱


それらは
君に何を見せるのかい?


     第1話,
〈泥沼の中のスターチス〉


誰かが呼ぶ声がした。

それは遠くから聞こえたはずなのに、だんだんと近づいてくる。

「――――…」

最大限の力で ぬくもりをつかまえる。

盗られないように、離されないように、


「―――…!!」

先ほどより大きな声。

ああ、嫌…!!

やめて、奪わないで
お願いだから…!!


「いやあああ!!ふとんはぎ取らないで!!」

「うるさい」

目が、覚めた。

必死に掛け布団をつかもうとする手を下ろしたマリは、不機嫌に双子の兄を見上げた。

「…おはよう、レギュ」

「おはよう。早く起きてください。…あの人が呼んでます」

「シリウスが?」

仕方なしにベッドから下り、カーテンをあける。

緑色の厚い布を左右にどけると、太陽の光がこれでもかと入りこみ、部屋を一気に明るくした。

「うーん…いいお天気ね!お日さまもお祝いしてくれてるみたい! ね、レギュラ…」

伸びをし、振り向くとそこにもうレギュラスの姿はなかった。

代わりに遠ざかる足音と姿が見えない声が廊下から聞こえた。

「2分以内に着替えて降りてくること。時間過ぎたら殴りますよ」

「げっ」


マリは慌ててパジャマを脱ぎ始める。

今日だけは、遅刻だなんて許されないのだ。

我が家主催のパーティーに幾度となく遅刻し、常習犯とかした彼女であってもそれだけは理解していた。


特別な日

私たちの、始まりの日


「…ホグワーツ」

9月1日

今日は11歳になったマリとレギュラスの、ホグワーツ入学式だった。
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