−1年生編−

□第2話〈馬車と銀と家族写真〉
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降り注ぐ光を背景に

君は「最期」といって微笑んだ

ああ、
僕の手では触れられない―――…


     第2話
〈馬車と銀と家族写真〉

シリウス、レギュラスと共にキングズ・クロス駅に着いたマリは、せわしなく辺りを見回した。

「ここがキングズ・クロス駅なのね!」

「ああ。そう言えばマリは来るの、初めてだったな」

シリウスは、自分の分とマリの分のトランクを持ちながら答えた。

「俺たちが向かうのはあそこ、9と3/4番線だ」

視線の先には柵。

マグルならば、ここが魔法学校への入り口だなんて夢にも思わないだろう。

マリはおそるおそる聞いた。

「痛い?」

「ああ、そりゃあもう!マリだったら泣き叫んで…」

「…貴方達は、本当にいい加減にしてください。恥ずかしくないんですか?道のど真ん中で」

レギュラスの声でハッとする。

周りにいる、マグルと思われる人々は黒髪の3兄弟をじろじろと見やっていた。

「これ以上ここにいるのは御免です。僕はもう行きますよ」

レギュラスは周りの人間を一瞥すると、カートを押して歩き出した。

「おい!待てよレギュラス!!」

シリウスはレギュラスの肩を掴んだ。

その瞬間…

バシッ

「!!」

「ちょっ…」

レギュラスはシリウスの手を思い切り払いのけ、実の兄を睨みつけた。

「触らないでくれませんか。…穢らわしい」

「……あ?」

「触るな、と言ったんです。その汚ない手で」

シリウスの瞳に怒りがちらついた。

たまらずマリは声をあげた。

「レギュラス!!なんてこと言うのよ!シリウスに謝って!」

「…うるさいな、マリには関係な…」

「いいから謝って!!」


……………。

「……すみま、せん」

レギュラスはぷいっとそっぽを向いた。

シリウスは はあっと盛大なため息をつく。

「…もう、いい。さっさとホームに入っちまおうぜ。そろそろ11時だ」

シリウスを先頭に、柵へと向かう。

マリはふぅっと息をついた。

まったく、なんでこんな所でケンカを始めてしまうんだろう。

この兄達は。


シリウスがホグワーツに入学してから、何かが崩れてしまった。

いや、少なくともマリは今まで通りだった。

しかし自身の双子は、そうはいかなかったらしい。


3人の中で、一番両親に忠実なレギュラス。

彼のまっすぐな思いは、“愚行”を成し遂げた兄を理解することなど、到底できなかった。

それ以来、レギュラスとシリウスは冷戦状態。

もう以前のように笑い合うことは、ぱったりとなくなった。


「お前ら、俺に続けよ」

シリウスはそう言い、スウッと柵の中へと消えた。
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